“会長書きおろし”20年間の年次レポート

2013.08.24~2014.08.25
さわかみファンド、こんなこともあったね(第15期)

前期の後半から、さわかみファンドにとって、かつて一度も経験したことのない資金流出という現実に追われだした。

顧客の利便性向上にと、長年にわたって巨額の資金を投入してきたWebシステムが、2012年の10月に導入された。それを機に、Webで解約のボタンを押すだけの売り注文が徐々に増加していった。

その流れを一気に加速させたのが、第15期である。この期は、2013年末をもって証券投資の軽減税率が廃止されるということで、ファンド仲間からの利益確定の解約も、ある程度は予測していた。配当・譲渡所得等に係る税率が10.147%から20.315%になる。それなら軽減税率が適用される間に売っておこうと考える人が出てきてもおかしくはない。またそこに、それまで設定していた信託財産留保金の完全撤廃も加わり、結果的に解約へと促すかっこうになったのだ。

前期から動き出している新経営メンバーは、資金の連続流入という記録にとらわれず、新しいことを模索し始めていた。そのひとつが運用報告会だ。

さわかみファンドは結果がすべてで、途中の説明は一切しない方針。そのため、毎月月末にお送りするレポートで、運用のすべてを公開している。それだけの情報を出しているのだから、あとは結果を楽しみにしてくださいだ。しかし新経営陣は、「企業の意思や、企業と歩む長期投資の景色をお届けしたい」と大きく舵を切った。具体的には、投資先の企業を多数お招きして、ファンド仲間と直接お話しする機会を設ければ、より長期投資の魅力が伝わるのではないかとの目論み。もちろん、一年間の運用も振り返りましょうだ。

ボタンひとつの解約に「ウーン・・・お電話いただければ」とうなる一方で、長期投資の本質に迫ろうとする勢いがまじりあい、いよいよ会社が変わっていくのだと感じた15期だった。