“会長書きおろし”20年間の年次レポート
- 2002.08.24~2003.08.25
- さわかみファンド、こんなこともあったね(第4期)
2002年に入って、小泉政権が銀行の不良債権問題を一掃すべく金融検査を徹底した。問答無用の融資先の洗い直しで、企業倒産の連鎖と景気後退が懸念され、株価全般は大きく売り込まれた。
すさまじい暴風が吹き荒れた中、さわかみファンドの基準価額はしぶとく抵抗し続けた。世の中では相場を追いかけるのを運用としているが、そういった他ファンドとの成績差は大きく開いていった。「どうだ、これが本格的な長期投資というものだ」と、われわれ運用サイドは鼻高々だった。なにしろ、こちらは生活者に必要とされ、自助自立の経営を貫いている企業群を厳選してポートフォリオ組入れしてきている。その成果だ。
とはいえ、株式市場が1982年の水準にまで下げてきて、さすがに抵抗しきれなくなった。さわかみファンドの基準価額も2日間だけ屈辱の7,000円台をつけた。お客様の財産づくりどころか、大きなマイナス勘定に、申し訳ない気持ちで一杯だった。
基準価額が大きく下がってきたこともあって、セミナーなどで「毎月積立型の投資は意味がないのでは?」といった質問をいただくことも多くなった。
たしかに、毎月積立て投資をやっていても、自分の買いコストが基準価額にスライドして下がっていくばかり。「これでは投資リターンにつながらないのでは?」といった疑問が生じてきてもおかしくはない。
当時、日本はもちろん世界でもはじめて投信の積立て購入制度をスタートさせて、まだ3年半しかたっていない。その間、さわかみファンドの基準価額は1年半ほどグーンと浮上したものの、その後はジリジリと下げて1万円を割ってきている。ここまでの推移をみる限り、積立て投資って意味あるのという疑問が湧いてくるのも仕方なかろう。
こちらとしては、「とにかく続けて頑張りましょう」と応えるしかない。心の中では「そのうち、みてな。きっと驚きでもって喜んでもらえる」と思いながら。投資のことだから、将来の成績の約束はできない。それで、このまま頑張りましょうというしかなかった。
後日談だが、あれから2年もしないうちに、さわかみファンドの基準価額が大きく上昇していった。それとともに、積立て購入はすごい成果を発揮することになった。
昨年からは「つみたてNISA」の制度もはじまり、いまとなれば笑い話のようなエピソードである。