雇用の流動化や賃金上昇率の停滞など、経済の先行きが不透明な昨今、資産運用に注目が集まっています。
一方で、投資商品への不信感から、「資産運用はしない方がいい」という声も一部からは聞こえてきます。
そこで本記事では、資産運用はしない方がいいと言われる理由やリスクを抑えながら運用する際のポイントについてご紹介します。
資産運用はしない方がいいと言われるワケ
なぜ「資産運用はしない方がいい」と言われるのでしょうか。考えられる理由を以下にあげます。
投資にはリスクがある
投資にはリスクが伴うため、「資産運用はしない方がいい」と考える人もいます。
投資といっても、その対象は株式や債券、不動産など様々です。初心者は、何に投資するか、どの程度のリスクを取るのかという投資判断を下すための知識が十分ではないため、「投資にはリスクがある」というだけで足踏みしてしまう可能性があるのでしょう。
もちろん、リスクゼロで利益が得られる投資商品は存在せず、投資商品にはそもそも元本保証がありません。
しかし、投資に取り組むことで預貯金よりも効率的に資産を増やせる可能性があります。
リスクとリターンの関係は表裏一体であると認識しつつ、自分がどれだけのリスクを許容できるのかを知ることで、リスクと上手く付き合いながら資産運用に取り組むことができるのではないでしょうか。
そのためにも、まずは無くなっても良いと思えるほどの少額から、投資を体験してみるのも良いでしょう。
投資するには知識が必要
「投資には専門的な知識が必要だから資産運用はしない方がいい」と考える人もいます。
特に、不動産や株式の個別銘柄などを分析するには一定の知識が必要となるため、「わからないからやめとこう」と投資から距離を置いてしまう人もいるでしょう。
そのような方には投資信託を用いた資産運用が検討できると思われます。
投資信託は、個人投資家に代わって運用の専門家が投資対象を分析/運用してくれるため、専門的な知識がない初心者にもおすすめの投資商品です。
前述の通り、必ずしも投資に専門的な知識は必要ありません。
投資の専門知識を自分で学び、自分で投資対象を分析するのも結構ですが、運用を本業とする機関投資家には知識もリソースもかなわないのが現実でしょう。
資産運用はその道のプロに任せ、ご自身は本業に注力するというのも合理的な選択のひとつではないでしょうか。
必要以上に投資を恐れている
投資を過剰に恐れている人も存在します。
それは、投資の失敗談を家族や知り合いから耳にしたり、投資にまつわるネガティブなメディア報道を日常的に目にすることで、投資に対するイメージが悪くなってしまっていることが一つの原因であると考えます。
しかし、人の話やメディア報道は、どうしても「良い部分」よりも「悪い部分」が強調されがちです。投資で成功している人は、その成果を人にひけらかしたりはしないため、ポジティブな話は浮上しにくいという傾向もあります。
投資をする/しないの選択は個人の自由ですが、「なんとなくの印象」で視野を狭めるのは賢明ではないでしょう。
投資のメリット/デメリット、そして危ない投資/堅実な投資の違いを見極めたうえで、自分の投資スタンスを定めていただくことをおすすめいたします。
資産運用をしない方が良い人の特徴
資産運用は誰しもが取り組むべきである、とは言い切れません。そこで、資産運用をしない方が良い人の特徴をご紹介します。
すぐにお金が必要な人
資産運用は、市場や企業の成長に投資して、中長期的に資産の増加を期待するのがセオリーとなります。そのため、すぐにお金が必要な人に資産運用は向いていません。
まずは、現在の資産状況と定期的な収入や支出を整理して、すぐに手をつけなくても大丈夫であろうと思える金額を把握したうえで、資産運用を取り組む余裕があるのかを確認してみましょう。
手元に運用資金がない人
資産運用は生活費などを除く余剰資金の中から資金を捻出することがセオリーです。そのため、まったく余剰資金を捻出することができないような方には向いていません。
前項と重複しますが、現在の資産状況と定期的な収入や支出を整理して、すぐに手をつけなくても大丈夫であろうと思える金額を把握したうえで、資産運用を取り組む余裕があるのかを確認してみましょう。
商品の値動きに耐えられない人
株式、債券、不動産等、あらゆる投資商品の価格は変動します。こうした価格変動が過度に気になってしまう人は資産運用に向いていないといえるでしょう。
資産運用はギャンブルとは異なり、長期的な視点でどっしりと構えて取り組むものです。
短期的な価格変動が気になってしまいそうな方は、まずは試しに少額で投資商品を購入してみて、その価格変動に慣れることから始めてみましょう。
資産運用が求められるようになった背景
次のような背景から、資産運用の重要性が高まってきていると考えられます。
少子高齢化問題
少子高齢化が進行する日本では、現役世代の社会保険料の支払いが増加する一方で、将来受け取る年金の目減りが危惧されています。
年金のみをあてにして老後を迎える時代は終わり、自分の老後資金は自分自身で準備しなければならないという機運が高まっています。
低金利環境が続く現在の日本では、リスクをとってでも効率的に資産を増やすことを期待する資産運用のニーズが高まっているのでしょう。
企業年金制度の変革
昔の日本企業は、確定給付企業年金(DB)という企業年金制度が充実していました。
確定給付企業年金は、従業員に予め定められた給付金を支払うことを約束する企業年金制度であり、その給付金の支払いにかかるリスクは企業が負担していました。
しかし、昨今は確定給付企業年金を維持するための企業側の負担が増加しており、給付金の運用リスクを従業員自身が負う、確定拠出年金という別の企業年金制度へ移行する企業も増えています。
かつての確定給付企業年金のように手厚い企業年金制度を採用する企業が減少してきた昨今において、「自分自身で老後資金を用意しなければならない」という意識が高まるのも必然でしょう。
長引く低金利環境
銀行に10年間お金を預けるだけで、預金残高が2倍に増えるような高金利の時代も日本にはありました。しかし、昨今は低金利環境が続き、銀行預金で資産を増やすことが困難な状況にあります。
かつての高金利時代を知る世代から低金利環境下で育った世代へと世代交代が進むことで、「資産運用をしなければお金を増やすことが出来ない」という認識を持つ人々が増加していることから、資産運用が注目されている面もあるのでしょう。
今から資産運用をはじめる人におすすめの投資商品
資産運用を始めるにあたって、どのような金融商品に投資したら良いのでしょうか。
ここでは、初心者でも手軽に始められる金融商品をご紹介します。
投資信託
投資信託は、複数の投資家から資金を集め、ファンドマネージャーという運用の専門家が投資家に代わって投資商品を分析/運用する金融商品です。
投資信託は手軽に投資することができ、専門知識を持たずとも分散投資をすることができるため、初心者にもおすすめの商品となります。
さらに、株式ファンドや債券ファンド、それらが複合されたバランスファンドなど、様々な種類の投資信託が存在し、自分の目標やリスク許容度に合わせて商品を選ぶことができるのも特徴です。
不動産投資信託
不動産投資信託(REIT)は、複数の不動産に少額から投資することができる投資信託です。
一般的に、不動産に投資するためには多額の費用が必要となります。
しかし、REITの場合は、多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する仕組みをとります。投資家は少額のREITを購入するだけで、複数の不動産の間接的なオーナーとなることができます。
個人向け国債
個人向け国債は国が発行する債券であり、1万円から購入可能です。
保有期間中には年に2回利子が支払われ、満期に元本全額が返還されます。個人向け国債は国によって元本の返還と利払いが保証されているため、低リスクで運用ができる点がメリットです。
リスクを抑えながら資産運用するポイント
資産運用に取り組むうえで、リスクとはうまく付き合っていく必要があります。
ここでは、なるべくリスクを抑えながら資産運用に取り組むためのポイントを説明します。
少額から運用する
資産運用を始める際には、まずは少額から始めることが重要です。
例えば、株式に1000万円投資すると、1日で10%、つまり100万円程度の資産価格の変動が生じることもざらにあります。
投資初心者は、1日に10%の資産価格の変動が起こり得る投資商品に対して、リスクが高いのか?低いのか?という評価軸を持ち合わせていない可能性があるため、最初から大きな金額で資産運用をはじめてしまうと、投資商品の価格変動に恐怖心を覚えてしまう可能性があります。
1000万円という金額が大きいのか小さいのかという尺度は人それぞれですが、本格的に資産運用をはじめる前に、まずは「このくらいの金額なら無くなったとしても困らない」と思える程度の少ない金額で投資商品を購入してみて、資産価格がどのように、どれくらい変動するのか、そのリスクを自分が許容できるのかという点を見極めるのが良いでしょう。
長期的な視点で利益の獲得を目指す
短期間で大きな利益を獲得することを期待して、リスクの高い投資商品に手を出すのは避けた方が良いでしょう。
投資の世界には短期間で大きな利益が獲得できることを謳う商品も存在しますが、それは同時に大きな損失が発生し得るということの裏返しでもあります。
堅実に資産運用に取り組む方法のひとつとして、投資信託を毎月定額で購入するつみたて投資をおすすめします。
つみたて投資は市場の値動きにとらわれず一定のタイミングで投資し続けることで、平均的な購入単価を平準化させる効果があります。これを「ドル・コスト平均法」と呼びます。投資信託は1万円程度の少額でもつみたて投資をすることができるので、生活を圧迫しない範囲で資産運用に取り組むこともできるでしょう。
また、つみたて投資は初心者でも投資を「習慣」にすることができるという点でもメリットがあると考えられます。
生活資金には手を付けない
すぐに使う予定のある資金、例えば生活費を資産運用に回してしまうと、視点が短期になってしまい、資産運用の効率も悪くなります。
また、余剰資金を超えた金額を資産運用に回してしまうと、当然に生活は苦しくなります。資産運用は生活費を除いた余剰資金で行うことが鉄則です。
分散投資をする
分散投資とは、複数の投資先に資産を分散させることでリスクの分散を期待する投資手法です。
投資先を一つに集中させるのではなく、複数の投資先に分散することで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることができるといわれており、初心者にもおすすめの投資手法です。
手軽に分散投資をするなら投資信託がおすすめです。
例えば株式に投資する投資信託の場合、一般的に数十から数百の銘柄に分散投資しているため、1つの投資信託を購入するだけでも十分に分散投資をすることができます。
さらに、投資信託を毎月一定の日に購入すれば、ドル・コスト平均法による購入単価の平準化も期待することができ、高値掴みのリスクを低減できると考えられています。
まとめ
資産運用に取り組む以上、リスクをゼロにすることはできませんが、本記事で説明した通り、老後不安などにより「資産運用をしないことによるリスク」も年々高まってきているのは事実でしょう。
今回ご紹介したポイントを踏まえて、資産運用を前向きに検討してみてください。
2023年7月1日時点の情報をもとに作成
もっともだと思うね。
ただ、資産運用の向き不向きは、自らを変革させれば良いこと。
資産運用は必要だよ。