出産費用は病院や出産方法、出産するまでの期間によって異なりますが、平均的に46万円程度の費用が必要とされています。
しかし、出産にはさまざまな支援が受けられるため、これが全て自己負担というわけではありません。
そこで本記事では、出産費用の平均額やケース別の費用、自己負担額、妊娠・出産で活用したい支援制度などについて、詳しく解説していきます。
出産費用はいくら?
まずは、出産費用の平均額やその内訳、出産費用の変動要因について見ていきましょう。
出産費用の平均額
厚生労働省が公表している「第136回社会保障審議会医療保険部会資料」によると、病院の種類とそれぞれの出産費用の平均額は以下の通りです。
病院の種類 | 出産費用の平均額 |
病院全体 | 460,217円 |
公的病院 | 443,776円 |
私立病院 | 481,766円 |
診療所(助産所を含む) | 457,349円 |
病院全体では46万円、公的病院では44万円台とやや安く、私立病院では48万円台とやや高めになっています。
出産費用の内訳
出産費用の内訳は、次の通りです。
費用 | 概要 | 2019年度の平均額 |
入院料 | 食事代や部屋代などを含む、入院にかかる費用全般 | 115,047円 |
分娩料 | 分娩にかかる費用 | 266,470円 |
新生児管理保育料 | 新生児の健康管理に必要な検査や保育にかかる費用 | 49,980円 |
検査・薬剤料 | 検査・投薬料 | 13,880円 |
処置・手当料 | 母体の処置、産褥指導料、乳房ケアなどの費用 | 14,840円 |
室料差額(a) | 通常の部屋の料金と部屋を指定した場合の差額分 | 18,074円 |
産科医療補償制度(b) | 出産時に重度脳性麻痺となった新生児の経済的負担を補償する制度 | 15,740円 |
その他(c) | その他の費用 | 30,151円 |
総計̠ -(a+b+c) | 全体から室料差額、産科医療補償制度、その他の費用を差し引いた額 | 460,217円 |
出産費用が変動する要因
出産費用が変動する要因としては、主に以下のようなものがあげられます。
- 施設の種類
- 住んでいる自治体
- お産のタイミング
- 出産方法
先述のとおり、施設は公立・私立といった施設の種類によって出産費用が多少変動します。もし特別な理由がなければ、公立病院で出産した方が費用は抑えられるでしょう。
また、出産費用は自治体によっても変動します。例えば、2019年度の公的病院における都道府県別出産費用の平均を見ると、最も高いところで東京都の53万6,884円となっています。一方で、最も低いところは鳥取県の34万1,385円となっており、およそ20万円程度の差が発生しています。
お産のタイミングでも出産費用は変動します。自然分娩の場合は、破水や10分間隔の陣痛が見られてから入院、子宮口が全開となって分娩となることが一般的です。これらのタイミングが短いか長いかはケースバイケースですが、入院や分娩が長期化すると、その分だけ費用はかさみます。
最後に、出産費用は出産方法によっても変動します。帝王切開、和痛出産・無痛分娩などでは、自然分娩よりも費用がかかります。
自然分娩の出産費用は自己負担になる
正常分娩では、公的医療保険が適用されません。そのため、出産費用は全額自己負担となります。
一方で、帝王切開を行った場合、麻酔や手術、投薬、入院費用などが保険適用になることが一般的です。
出産に活用できる支援制度
出産時には多くの出費が発生するため、活用できる支援制度は知っておきたいところです。ここでは、代表的な支援制度をいくつかご紹介します。
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産・養育にかかる費用を助成するために、国から支給される一時金のことです。
2023年4月より出産育児一時金の金額が改定されることになり、4月以降は50万円支給されることになります。
出産育児一時金は、健康保険に被保険者やその扶養家族であること、妊娠85日(妊娠4ヶ月)以上の出産であることを満たせば支給を受けられるため、必ず活用したい制度です。
出産手当金
出産手当金は、出産育児一時金と名前が似ていますが、異なる制度です。
この手当金は、出産のために産休を取得しており、給与の支払いが受けられなかった場合に健康保険から支給を受けることができます。
ただし、出産手当金は健康保険の被保険者が対象なので、自営業者や専業主婦は対象外です。
医療費控除
医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に、確定申告で一部が返ってくる制度です。
医療費控除には出産費用も対象に含まれますが、支出が出産のためと認められる必要があります。
例えば、妊婦健診費、通院治療費、病院への交通費、不妊治療費などがあげられますが、妊娠検査薬や寝具、おむつ、ミルクの購入費などは対象外となっています。
また、医療費控除の対象となる出産費用が全額控除されるものではなく、出産育児一時金などの補填分等を差し引いたうえで医療費控除の金額が算出されます。
出産費貸付制度
出産費貸付制度は、出産育児一時金を受け取るまでの期間、出産費用が無利子で借りられる制度です。貸付金額は1万円単位で調整可能で、限度額は出産育児一時金の支給額の80%相当です。
出産育児一時金は、直接支払制度や受取代理制度といった制度がありますが、こうした制度を利用できない病院で出産する際は、出産後に本人が給付の申請をしなければなりません。
このように、本人が直接出産一時金を申請する場合、実際に給付を受けるまでに1~2ヵ月かかるため、本制度による当面の出費への貸付が行われています。
育児休業給付
育児休業給付は、雇用保険の加入者で、育児休業を開始する2年間に、11日以上仕事をしていた月が12カ月以上ある人に向け、休業中のお金を支援してくれる制度です。
1ヵ月で受け取れる育児休業給付金の額は、「休業開始時賃金日額×支給日数の67%」とされています。
給付条件や対象期間はやや複雑なため、厚生労働省のホームページも確認してください。
出産・子育て応援交付金
出産・子育て応援交付金は、妊婦1人につき5万円の出産応援給付金と、新生児を養育する母親に対して子ども1人につき5万円の、子育て応援給付金を支給する制度です。2つを合わせると1人につき10万円の交付金が受け取れます。
なお、出産・子育て応援交付金の支給は各自治体の判断によって実施方法が異なります。現金支給、クーポン、現物支給など受け取れるものも変わりますので、事前に確認しておきましょう。
出産費用に困らないためには
これまで見てきたように、出産には支援制度が多々ありますが、それでも自己負担は発生してしまいます。そこで、出産時に費用で困らないようにするために、事前に準備しておくべきことをご紹介します。
あらかじめ貯金しておく
出産後には出産や分娩費用だけでなく、子育て費用など継続的に費用が発生します。そのため、あらかじめ貯金をしておくことが大切です。
夫婦で上手にお金を貯めるには、貯金用の専用アプリやクレジットカードによる支出の見える化、家計簿の作成などがおすすめです。
また、出産後の費用を考えるためには、夫婦である程度出産や子育てに関する価値観のすり合わせも必要です。
妊娠した段階で、貯金に関する話し合いの場を設けておきましょう。
出産にかかる費用を把握しておく
先述のように、出産費用の平均額は46万程度ですが、細かな出産条件についても考慮しておく必要があります。
例えば、無痛分娩をするのか、病院は公立にするか私立にするかなど、夫婦が考える出産の条件を加味して出産費用を算出しておく必要があります。
また、意外と盲点なのが、不妊治療です。不妊治療は治療費のみならず、薬剤費やサプリメントの費用、通院のための交通費・ガソリン費など、副次的な費用も発生します。
子どもにかかる費用は、不妊治療から出産、育児まで想定し、長期間の貯金計画を立てておくことをおすすめします。
将来の出産のために投資をしておく
出産、子育てに関する費用は高額であり、支援制度を利用しても家計の負担になることは間違いありません。
そこで、出産前から、将来のために家庭で地道に投資を行うことをおすすめします。
また、出産や育児に関する費用は突発的なものも含まれるため、すぐに現金として手元に戻せる流動性も重要です。
投資は必要生活費を除いた余剰資金で運用すべきですが、いざというときのための資金の確保も考慮しておきましょう。
まとめ
出産費用は病院や出産方法、出産するまでの期間によって変動しますが、平均で46万円程度必要とされています。
しかし、これらすべてが自己負担なのではなく、各種支援制度によって出産費用を抑えることができます。
今回ご紹介した費用や支援制度を参考に、出産費用の自己負担額を抑える方法を考えてみてください。
※2023年4月1日時点の情報をもとに作成