一昔前まで、日本では終身雇用と退職金によって多くの労働者の老後が保証されていました。
しかし、不景気や雇用の流動化で社会情勢が変化する中、老後の資金が不足する人たちも多く見受けられるようになっています。
そこで本記事では、老後に必要な資金の平均額や不足する理由、対策などについて詳しく解説します。
老後資金の必要額とシミュレーション
老後資金の必要額は、生活費・医療費・介護費などによって異なります。
一般的には、退職後の生活費は現役時の約60%程度といわれています。現役時代の生活費が20万円の場合、退職後は12万円程度に抑えるのが好ましいということです。
多くのサイトで、老後の生活費や貯蓄額、投資額、年金額などを入力することで、将来の老後資金の必要額を算出できるシミュレーションツールが公開されています。これらを利用して、一度イメージを膨らませてみましょう。
老後2000万円問題
政府の金融審議会市場ワーキング・グループが2019年6月に取りまとめた「高齢社会における資産形成・管理」報告書では、人生100年時代を見据え、資産形成の重要性が語られています。
同報告では、引退後95歳まで生きた場合2,000万円の貯蓄が必要になるとしており、公的年金だけでは老後資金が不足すると説明しています。
この内容は世間でセンセーショナルに報道され、多くの波紋を呼びました。
報告書の内容は多くの批判を集めましたが、個人で老後資金の対策を考えることが重要なのに変わりはありません。老後資金の必要額とシミュレーションを行い、必要な金額を早めに把握しておく必要があります。
老後資金の対策としては、定期的な貯蓄や投資が有効です。具体的には、株式や投資信託などのリスク資産に投資し、長期的な資産形成を目指すことが大切です。また、不動産投資や副業などの収入源を確保することも考えられます。
いずれにしても、老後資金の対策は早めに考えることが肝心です。老後に備えて、今から対策を考え、資産形成を進めましょう。
独身に必要な老後資金
総務省統計局が公表している「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」によると、高齢単身無職世帯(65歳以上)の毎月の収入(公的年金など)は平均135,345円となっています。
これに対して、支出は平均144.747円となっており、収入と比べて9,402円不足しています。
毎月9,402円もの生活費が不足しているということは、1年間で112,824円、老後が30年続けば3,384,720円不足することになります。
夫婦に必要な老後資金
先の総務省統計局の調査を参照すると、夫婦高齢者無職世帯(65歳以上の夫婦)の毎月の収入(公的年金など)は平均236,576円となっています。
これに対して、支出は平均255,100円となるため、18,524円不足が生じていることになります。
1年間では222,288円、30年間では6,668,640円の不足が生じることになり、この分は貯蓄などから取り崩す必要がありそうです。
老後資金が不足する理由
老後に資金が不足する理由としては、年金不足や長寿化、退職金の減少などがあげられます。
年金不足による老後資金の不足
国民年金は国民全員が加入しますが、サラリーマンや公務員などはそれに加えて「厚生年金」にも加入する、所謂「2階建て」構造になっています。
厚生年金では、年金の支払いが多くなる分、引退後の年金受給額は多くなります。厚生労働省が発表する「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、国民年金の平均受給額が56,368円なのに対して、厚生年金の平均受給額は145,665円と、3倍近くの差があります。
このように、自営業者などは厚生年金をもらえないため、老後資金を準備できていない家計では更に老後資金が不足してしまうのです。
長寿化による老後資金の不足
長寿化も老後資金の不足要因として考えられます。
厚生労働省が公表している資料「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える- 平均寿命の推移 」によると、2019年の男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳となっています。
また、2040年の男性の平均寿命は83.27歳、女性で89.63歳とさらに伸びることが予測されており、その分老後の資金は多く用意しておかなければなりません。
さらに、健康寿命と寿命に差があると、その分医療費がかかり続けるため、老後の資金不足の大きな要因となります。
退職金の減少による老後資金の不足
退職金の減少も老後資金の不足の大きな要因となっています。
一昔前の日本では、年功序列と終身雇用を前提としており、定年を迎えるとまとまった退職金が支給されることが常識となっていました。
しかし、現在では、雇用の流動化や不景気なども重なり、老後に十分な生活を送れるだけの退職金を貰える会社は少なくなっています。
老後資金を準備する方法
老後に必要な資金を準備する方法としては、以下のようなものがあげられます。
- 不要な出費を削減する
- 副業する
- つみたてNISAを活用する
- 不動産投資をはじめる
1つずつ詳しく見ていきましょう。
不要な出費を削減する
老後資金を貯めるためには、日頃から不要な出費を削減しておく必要があります。
例えば、外食を減らす、不要な新聞やコンテンツの購読・サブスクを解約するなど、老後を迎える前に小まめに節約しておく習慣をつけましょう。
特に、現役時代に豪華な生活をしていると、老後に生活レベルを下げるのは難しいものです。現役時代から身の丈に合った生活を心がけましょう。
副業する
支出だけでなく、現役時代に新たな収入源を得ておくことで、老後資金の足しにすることができます。
副業はその代表的な方法のひとつです。
副業には在宅でできるものや、短時間でも数万円の収入を得られるものを選ぶと良いでしょう。
老後に新たな収入源を得るのは難しいため、現役時代から実践しておきたいところです。
つみたてNISAを活用する
つみたてNISAは、積立投資専用の少額投資非課税制度(NISA)のことで、金融機関に申し込むことで、毎月口座から一定額が引き落とされて投資商品の購入にまわされます。
つみたてNISAでは、投資で得た利益を一定期間内、非課税で受け取ることができるため、投資効率化が良く、将来に向けた長期的な資産形成に向いています。
低金利で貯金では資産が増えない現在では、有効な資産形成の手段となっています。
不動産投資をはじめる
現役時代から不動産投資をはじめることも、老後の資金不足への対策となります。
不動産投資はある程度専門知識が必要になるため、現役時代から経験を積むことが必要です。
詳しくは次の章で解説します。
老後資金の準備に不動産投資をおすすめする理由
不動産投資は、老後資金の形成に適した投資手法です。
ここでは、老後資金の準備に不動産投資がおすすめな理由をいくつかご紹介します。
安定した収入がある
不動産投資は一時的な景気に左右されにくく、インカムゲインである家賃収入を継続的に得ることができます。
老後も物件を所有し続ければ、老後の不労所得としても役立ちます。
さらに、土地や物件の値段が高騰すれば、売却によりキャピタルゲインを得ることも可能です。
不動産投資はある程度知識が必要なため、老後に向けて少しずつ投資ノウハウを学んでいきましょう。
インフレ対策ができる
不動産投資は他の投資に比べ、インフレに強いことで知られています。
預金や国債はインフレによって資産価値が目減りしてしまいますが、不動産投資は価値が下がりづらいため、インフレが進んでも安定した家賃収入を得続けることが期待されると思われます。
特に老後の資産が貯蓄や国債しかない場合、インフレ対策として不動産投資をはじめるのは有効と考えられます。
投資に手間がかからない
不動産投資をはじめると、物件は不動産管理会社が管理してくれるため、手間をかけずに収入を得ることが期待できると考えられます。
こうした労力をかけずに得られる所得を「不労所得」と呼びます。
不動産投資による不労所得は、現役時代には本業を圧迫せず、老後もゆっくり暮らすことが期待できると考えられます。
まとめ
本記事で見てきたように、老後30年間公的年金の給付を受けながら暮らす場合、単身世帯では最低でも340万円程度、夫婦2人世帯では最低でも670万円程度の老後資金が必要です。
また、これらの金額は必要最低額であり、余裕のある生活を送りたい場合はさらなる資金が必要になるでしょう。
他にも、将来年金の減額や税負担増、医療費負担増などが生じる可能性もあるため、できるだけ老後資金は潤沢に用意しておきたいところです。
老後資金には、つみたてNISAなどの非課税制度を上手に利用するとともに、老後への資産形成に適した不動産投資も検討することをおすすめします。
現役時代から地道に投資をすることで、労働収入と公的年金以外に安定した収入源をつくりだしておきましょう。
※当社は金融商品取引業者であり、不動産販売業者ではございません。
※当社の取り扱う投資信託(さわかみファンド)は、つみたてNISAの対象商品ではございませんが、2024年1月1日以降、新NISA(成長投資枠)の対象商品となる予定です。
※2023年4月1日時点の情報をもとに作成
一般のモデルの試算は皆に当てはまらない。大切なのは、現役時代の支出(ムダ)をいかに控えて生活する(クセをつける)か。
収入が多いほど支出が多くなることが普通だけど、単に収入を増やす、または貯金をしておくだけでは老後の生活は賄えないよ。