「古代への情熱
シュリーマン自伝」
シュリーマン著
新潮文庫
40年ちょっと前のこと。世界有数の運用会社でアナリストとして日本企業のみならず、世界の主要企業の分析レポートを書きまくっていた。
当時のヨーロッパや米国には、とんでもないレベルのアナリスト達がゴロゴロしていた。彼らに負けるものかで、これはと狙いを定めた企業の過去10年20年の経営状況を徹底的に調べては、10年先の予想財務諸表を作成したりで、毎日16時間は仕事をした。
まだ一人者だった気楽さもあって、文字通り仕事漬けの毎日。というか、白人社会の間で唯一のイエローだったので、圧倒的な実力差を見せつけなければ認められない。逆に、大きく伸びれば、信じられないような昇進が待っていた。
もっともっと頑張ってやろうと、土曜も日曜もなしでアナリスト稼業にのめり込んでいったわけ。
そんな中、毎日の遅い夕食はワインとチーズにパン、それとオレンジを肴に読書と洒落込んだ。これが一瞬の息抜きであり、自然とロマンを追いかける書物が中心となっていった。
いろいろ読み漁っては、数字データや論理でパンパンの頭を冷やしたものだ。そのひとつが、本書の「古代への情熱」である。
子供の頃、ギリシャ神話に魅せられたシュリーマンは長大な人生プランを建てた。先ずは語学を学び貿易で財を成し、その資金を元手に長年の夢であったトロイ遺跡の発掘に向った。
読んでいるうちに息抜きどころか、シュリーマンの人生をかけた夢への挑戦に、やたら興奮させられたのを覚えている。