世界の化学企業の中でも傑出した「経営力」が武器
「良質な顧客群」が見えない資産として評価できる
創立87年、長野に端を発する売上高1.5兆円を誇る化学企業。石油化学だけではなく珪素化学からの利益も約半分を占める特徴を持つ。「収益性の高い事業を追掛けて技術や合理化で勝負をしても、市場が伸びなければ成長は行き詰まる。需要が伸びる分野を選ぶ限り利益を生み出せないのは経営の責任。」と言い切り、そのため主力事業は、塩ビやシリコンウェハー、希土類磁石等、私達の生活の基盤を担うために必要不可欠な製品群で構成されている。当然、そういった製品事業の業績は景気の波に大きな影響を受けるが、同社は長期の視点に立った経営判断により、(1)競争優位に導く原料へのアプローチ(2)徹底的な生産活動の合理化(3)それによる利益の一部を常に安定供給や技術対応等の顧客との信頼構築に使うことで好・不況でお互いに過度な取引の調整をしない顧客群を築いてきた。それにより生産設備の稼働率を高く保てるという好循環が生まれ、厳しい事業環境に陥った時でも勝ちパターンを築けることを世界に証明してきた。高い技術力はもちろん、一朝一夕には真似のできない世界中の顧客との信頼が潜在的な資産として長期投資の根拠になっている。
【アナリスト 斉藤 真】