2015年3月12日訪問 すみだ事業場・花王ミュージアム(東京都墨田区)
創業者の想いを現在まで受け継ぎ、“よきモノづくり”を続けてきた同社。
その清浄文化の歴史と事業活動、最新製品にふれました。
13:00 亀戸駅集合
バスにてすみだ事業場へ向かいます。
14:00 花王ミュージアム
会社概要をご紹介いただいた後、事業場内にある「花王ミュージアム」を訪問。清浄生活の向上に深く関わってきた同社の事業活動の歴史や、最新の製品を見学。
清浄文化史ゾーンでは、古代メソポタミアから現代に至る人々の暮らしを“清浄”という視点でたどります。
15:40 ご講演
花王が実践するVOC(Voice of Customer)を活かした“よきモノづくり” についてご講演いただきました。実際の商品を例に、多様な生活者へ対応するユニバーサルデザインをご紹介くださいました。
正道を歩む 天佑ハ常ニ道ヲ正シテ待ツベシ
花王ミュージアム見学では、日本の清浄文化史とともに社史の説明を受けました。印象に残ったことは、外国産に負けない国産石鹸を目指し「花王石鹸」を1890年に発売した創業者長瀬富郎が社員とその家族に宛てた5メートルにわたる遺言書です。そこには「運は、即ち天佑なり。天佑は、常に道を正して待つべし。」とあり、役員、社員が協同一致して品質や経済に留意して事業を継続するよう申し渡しています。この一文が同社の企業理念である花王ウェイに活かされ、コンプライアンス指針「正道を歩む」に繋がっています。
二代目長瀬富郎は社会の進歩発展に即して、人々の要求に適合した製品を供給することによって社会的な使命を全うすることを事業の目的としました。欧米視察ではデパートやチェーンストアを訪問、P&G社を視察し近代的量産方式に感動、大衆のために良質な石鹸の量産開始を決断しました。「新装花王石鹸」は1931年に発売、高級品だった石鹸が「日用品」になる端緒となりました。
P&Gを目標に日用品の量産を開始した同社は、スーパーマーケットの過当競争で疲弊した問屋流通の是正に取り組み、日用雑貨卸同志が出資し同社専門の販売会社を設立しました。これにより、小売店での販売状況を直接把握し、需要予測に基づく生産・在庫管理を効率化する直販体制が始まり、同社の競争優位性が築かれていきます。最大で128社に増えていた販社を90年代に広域8販社、さらに今では一社に統合しました。同時にITによる物流の合理化を継続し、現在ではドラッグストア、ホームセンター、スーパー、コンビニなど多業態の小売先から販売データを直接吸い上げ、全国九工場においてジャスト・イン・タイム方式で生産し、小売店舗からの要望で翌日配送を実現するサプライチェーンを構築しました。年末の需要期には、店頭を掃除用品に陳列替えしますが、長年蓄積した全国のデータを解析し、信頼性の高い予測に基づく生産を行って欠品による機会損失を少なくしています。
また現在では、こどもから高齢者まで幅広い年齢層に受け入れられる製品・サービスをユニバーサルデザイン(UD)指針として策定。生活者の声をコミュニュケーションセンターの電話対応、家庭訪問によるフィールド調査や高齢者体験ワークショップで議論し、発見した改善点を各事業部に移し、研究開発チームやデザイナーが擦り合わせて具体化しています。2013年の新製品・リニューアル品数573品目中9割にUD視点による改善が加えられています。
今回の見学会で社員の皆様との会話を通して同社の経営組織には、創業者長瀬富郎の理念が花王ウェイとして、社員の行動原則に受け継がれていることを感じました。現在、同社は中国はじめアジアに進出し、海外売上比率30%を中期目標としています。99年からEVAという財務指標を導入し、各事業の投資効率を管理することで企業価値を向上する経営や、地道なコスト削減活動の継続によって株主への配当金連続増配25年は日本記録を更新中です。
同社の創業からの使命であるイノベーションのDNAを組織力で活かし、世界の巨人P&Gのように50年を超える増配を実現するグローバル企業への成長を今後も応援したいと思います。【ファンドアドバイザー 歌代 洋子】
参加されたお客さまの感想