「(マーケットが)下がるのが怖い?私は嬉しいですね、沢山買えるから。」「年金不安? 社会インフラを築いてくれた世代の方に『ありがとう』って積み立てるのが年金。自分の老後は自分で何とかしますよ。人口構造を嘆いても仕方ないですから。」 平成生まれの若き長期投資家は「お金の前提」があっけらかんと違う。 世論に流されないクールさ。渋谷にあるマンションの一室から世界地図を眺め、人財開国を目指すパッション。失われた20年のせいにするのではなく、動く人間は、動いている。
人財開国に
「なぜ?」学生時代、仲間(留学生)はみんな卒業後に自国へ帰った。スペイン、スイス、ポルトガル、中国。日本語に長け、日本文化を愛し、日本企業で働くことを熱望した彼らだが、仕事を得られなかったのだ。
友人としてのやるせなさ。そして少子高齢化が叫ばれる日本で親日派の優秀な人材が目の前で国外流出していく光景への憤り。中村さん(25 歳)が卒業後に株式会社ソーシャライズを創業したきっかけだ。
同社は留学生に特化した就職支援サイトの運営を通じ、日本が「人財開国」になることを目指している。
「日本で就活する留学生は年間約2 万8千名。内定を得るのは全体の約1/3。残り2/3は能力不足なのか?違う、日本の新卒採用システムと合わないのです。OB・OGとのコネがない、学歴、筆記試験等で足切りされる留学生は少なくない。だから『優秀な留学生』と『グローバル人材を求める企業』が直接出会える場をWEB 上に創りました。」
仕組はシンプル。①日本語力 ②高い専門性 ③良い人柄 の3 つを満たす留学生を面談等で同社が選考。
プロフィールと挑戦する思いを同社の専用HP に掲載し、企業が自由に選ぶ。
留学生にはインターネット上の企業情報を鵜呑みにせず、自分の目で見て納得した企業を選ぶことを、受入れ企業には留学生に日本式の働き方を押し付けないこと等を啓蒙しながら中村さんは言う。「日本企業のグローバル化に貢献した留学生が、自国に戻り現地のリーダーになる。モノづくり日本が、世界が必要とする人材輩出大国に。そして、日本に限らず志ある人材と企業が自在に行き交う社会をこの目で見たい。」
千円の理由書
さわかみ投信との出会いは中学時代、揺れる電車の中吊り広告に掲載されたキャッチコピーだった。
「これからは、お金に働いてもらう時代だ。」弊社澤上篤人の著書(または記事)の紹介文に目を奪われた当時13 歳の中村さん、2 つの理由でお金に困っていた。
1 つは、親友が金銭的な理由で中学に通えなくなっていたから。「想いの込められたお金がないと、悲しいことになる。」
2 つ目は、千円以上の支出が必要な場合、必ず親に「理由書」を申請する中村家のお小遣い制度による。例えば、人気のミニ四駆と特殊パーツが欲しい場合、「パーツは手持ちの廃品で工作すれば買う必要がないの では?」など親から合理的な理由を求められる。「自分次第でお金を出さずとも手に入るモノがあることを知った。同時に、お小遣いをもらうだけではなく、自ら増やすことができないか。」
そして、高校で株式投資を、大学で「さわかみファンド」を始めた。
汗とリターン
「暴落=バーゲンセール」と市場低迷期を 「つみたて投資」で買い進んだ中村さん、リターンの使い方も大切にしている。
「いろんな会社の人たちが、必死に汗をかいて付加価値を生み出している。その積み重ねが投資リターン。だから一人儲かって終わりでは物悲しい。どうやって社会に還元していくか。手元資金に窮したら?東南 アジアに出稼ぎですね、何とかなりますよ。」事実、学生時代に実費でパキスタンの留学生を支援するなど出稼ぎ先は確保されており、さわかみファンドの解約代金は人財開国を目指す事業資金となって活用されている。
長期投資をアジアへ
最後に夢をたずねた。
「アジアで長期投資を広める人材教育をしたい。海外出張時に現地の証券会社や銀行で聞く投資状況はゼロサムゲーム一色。企業の成長を応援する、社会を支えるといった投資の先に広がるストーリー・思想がない。日本の『縁の下の力持ち』といった文化も含め、長期投資のカルチャーを輸出したい。」
成長著しいアジア、中国を中心にマネーの覇権を巡る国家間の争いが激しさを増す一方、生活者と企業が二人三脚で豊かな社会を築く長期投資の種も、新しい世代によって静かにまかれている。
投資や起業の動機は一言、「人が好きだから。」という中村さん。
中学時代に一時学校を離れた親友と、今はシェアハウスで一緒に暮らしている。
株式会社ソーシャライズ
取締役社長
中村 拓海 様
東京外国語大学在学中に世界各地を飛び回り、海の先には才能と情熱に溢れる人々が多くいることを知る。現在は日本の人財開国を掲げ、渋谷のオフィスで留学生たちの就職支援に励んでいる。
取締役社長
中村 拓海 様
東京外国語大学在学中に世界各地を飛び回り、海の先には才能と情熱に溢れる人々が多くいることを知る。現在は日本の人財開国を掲げ、渋谷のオフィスで留学生たちの就職支援に励んでいる。