「三国志」
吉川 英治著
講談社
いつかは書かねばと思っていたひとつが、今月の「三国志」である。いろいろな「三国志」を読んできたが、いつも心踊されるがままに最後のページまで行ってしまう。
当初は人物研究の勉強にと、「三国志」の世界へ入っていった。長期投資をはじめとして、経済活動のすべては人間のなせる技といえる。だったら、人間研究だとなって、「十八史略」やら「三国志」を著者を取っ替え引っ替えで読み込んだというわけ。
はじめのうちは、孔明とか関羽・張飛の活躍や、曹操と劉備の激突に関心が行った。そのうち興味を深めていったのが、魏の曹操である。ともすると、劉備玄徳や諸葛亮孔明と比べるに、曹操は悪役の代表みたいにされるが、人物としてはスケールが大きい。
当代随一の政治家であり軍略家であった曹操は、同時にすぐれた詩人でもあった。その多才さには目を奪われるものがある。また、人材の登用にも積極的だった。
よく考えると、曹操ほど天賦の才に恵まれずとも、事業家や長期投資にも詩心とか人間としての包容力は欠かせない。
いつの時代でも、新しい経済社会を切り開いていくのは事業家と投資家である。どれだけ先見力や将来構想力をもっているかが、事業家や投資家には問われる。
将来社会をつくっていくともなれば、理論や数字でガチガチでは困る。人間的な大らかさと潤いが求められ、そこには詩心というか人間性といったものが大事となってくる。