義務教育校のパイオニアとして新たな教育をはじめる
春日学園、先生方の熱き想いとは
筑波山のふもと、グラウンドを駆ける子どもたち。一見何の変哲もない学校に、世界中の教育関係者が視察に訪れる。一つ屋根の下で小学生と中学生が共に学び、遊ぶ。校舎には家族の温もり、職員室にはベンチャーの熱気が漂う。
児童生徒数1,640名、不登校児童生徒ゼロ。7年生(中学1年生)からの急激な学力の伸び。小中一貫教育を通じ「学ぶ喜び」を育む同校の挑戦は、富と教育の不平等さえ覆す情熱に溢れている。
子どもたちに、長期投資を
一年前、弊社勉強会終了後にファンド仲間でつくば市立春日学園校長を務める片岡先生はこう声をかけてくださった。
「これまで、お金の話は学校や家庭でタブー視されてきました。しかし、子どもたちが社会の役に立つ人間になるために、社会の役に立つお金の活かし方を学ぶことは大切じゃないでしょうか。投資は自分だけが儲ける手段じゃない。21世紀、水や食糧不足など貧困に喘ぐ国がまだまだある。一方、経済的に裕福な日本に生まれた子どもたちが、世界のためにこれから何ができるか?『私も社会も豊かになる長期投資』の授業、やってみませんか?」
“どこよりも早く明日の教育に出会える学園”を目指す先生方との授業づくりはすぐに始まった。
門外漢の私は「よい教育、よい先生とは?」と尋ねた。「人が人を育てる、教育の根幹はそれです。愛情がなければ、相手は耳を傾け、心を開かない。授業がスムーズでも、愛がなければ子どもたちは見抜く。一方、相手の人生に関わる愛を先生が抱けば、教え方がぎこちなくても、子どもたちの学力は伸びる。自ら学び、選択し、責任をとることを子どもたちが恐れず、喜ぶからです。」さらに「いつの時代も子どもたちは自分以外の価値観との出会いを求めている。」と片岡先生。
ホンモノに触れる
「子どもたちはホンモノに飢えている。だから世界一の町工場を訪れ、未知の世界に触れる。国内外で活躍する弦楽四重奏を招き、心揺さぶられる。子どもたちはゾクゾクしながら新たな感性と論理の広がりを獲得する。それに、元来子どもたちは互いに学び合う力をもっています。当校は誰でも入れる公立の小中一貫校です。幅広い年齢差・能力差はハンディでは?と聞かれますが、それらこそ私たちの強みです。掃除中、低学年が手の届かない所は高学年が手を差し伸べる。文章の得意な子が、分析に強い子の発表をアシストする。子どもたちの多様性こそ、学ぶ喜びの源泉です。」
文部科学省の研究指定校である同校、学びの目的は普遍、されど手段は先進的だ。ITによる思考の見える化、異学年協働による問題解決。9年生を対象に実現した長期投資の授業もゼロから開発、多くの教育関係者から反響を得た。終了後、片岡先生は仰った。「教育は社会による投資ではないでしょうか。10年先の企業を育てるように、私たちは30年先の人づくりを目指す。生きているうちにその成果を見ることはできない。しかし、新しい社会や文化をつくり、日本や世界をリードする人間を、自らの意思を込めて育てることが出来れば、こんなに嬉しいことはない。教育のリターンは子どもの成長であり、未来そのものです。」
新たな教育モデルの模索
最後に片岡先生の夢を伺った。「春日学園のチャレンジは“教育日本一”を掲げるつくば市と同市教育委員会、そして数多くの先生方との長年の取組みの結晶です。つくばの地で、チーム春日で培った教育がどこまで通用するか?世界で挑戦したい。一人でも多くの子どもたちの心に火を灯すために。」
すべての子どもたちが本性にもつ「学ぶ喜び」に国境はない。エリート選抜をせず、能力差を学び合いの多様性として強みに変える春日学園の挑戦は、国と家庭間で広がる格差を超えてグローバル社会に新たな教育モデルを提示する。そして教育は、本来企業へのもう一つの投資の姿なのかもしれない。
「事業は人なり。」と戦後日本経済を切り拓いた松下幸之助氏、「国は人を以て盛なり」と明治維新を支えた吉田松陰氏。人づくりは、企業づくり、国づくりへ。教育と投資、目指す未来は同じだ。
【直販部 佐藤 紘史】
つくば市立春日学園
春日小学校 春日中学校
校長
片岡 浄 様