小説 吉田学校
戸川 猪佐武著
角川書店
戦後の日本の政治を学んでいく過程で手にしたのが本書。より正確にいうと池田首相が打ち上げた所得倍増論による高度成長期を勉強している間に、本書を読んでしまったというところ。
ひょうたんから駒ではないが、本書で戦後政治のダイナミズムの一端が知れておもしろかった。
当時は政治家も多士・多才で、人間的なドロドロ感も半端ではない。また、井戸塀政治家もいて天下国家の議論が活発になされた。
ひるがえって昨今は、2世政治家から3世まで出てきている。職業としての政治家の矜恃はどこへやら、ただ代々の選挙地盤を守るだけの世襲政治家に随している感が強い。
昔から政治家は選挙で落ちればタダの人といわれるが、最近の票集め政治には眼を覆いたくなる。政治家ならず政治屋の集団といいたいケースがひんぱんに発生している。
ひたすら次の選挙に汲々し、当選後は仲間議員の数集めに走るだけ。10年先20年先の日本をどうしていくのかの確たる方向と、そこに至る方法論を打ち出せる政治家らしい政治家たちが、大挙して出現してくれることが待たれる。
われわれ長期投資家は、いつも政治家よりずっと先を行く。こんな世の中にしようよという具体的な方向性をもって、お金にどんどん働いてもらうのだ。
いま現在の利権や既得権にとらわれることなく、常に将来を見すえて新たなる価値を追求していく。より良い経済社会を築いていくことは、子どもや孫たちに対する大人の責任である。