NYでは、メイソンジャー・サラダ(密閉ビンで作るサラダ)が流行しているそうです。保存性と彩野菜を楽しみ、米国民の健康・栄養への関心は強いようです。パッケージ・サラダは1970年頃に開発され、コールド・チェーンの普及や1991年の「5 A DAY」(1日5種類の青果物摂取の食育)で、流通量が急増しました。ブランド農産物のパッケージ製品は年率5%弱で成長し、米国の市場規模は約5,600億円で、野菜小売販売額の約10%に相当しています。冷蔵フレッシュカットサラダ米国市場の4割はドール社やフレッシュ・エクスプレス社、他はストア・ブランドになりました。
企業の持続的成長は、まだ表面化していない生活スタイルの変化による大きな新市場を開拓することにあります。真似できないビジネスモデルや売上成長の持続力を、製品開発の特許調査や研究開発効率から発見することも多く、圧倒的な存在の企業の強みには様々な側面があることを実感します。
日本のカットサラダの市場規模は、2000年の約100億円から、現在では1,000億円近く、野菜小売販売額の約3~4%と推計されています。2012年度の農畜産業振興機構の調査によれば、カットサラダは、買い物客の50人中1人が購買する商品であり、サラダ関連商品の品揃えも豊富になりました。最近の調査では、購買頻度は消費者の2割が週1~2回と回答しています。キャベツが全体の3割を占め、野菜高騰時の代替品から販売数が安定する定番商品となりました。専用ドレッシングや調理を簡便にする加工調味料など様々な新製品で消費が喚起されています。また、家計消費の食料支出構成比率を長期的にみると加工調味料が上昇傾向にあります。これは働く女性、イクメンや定年世代の増加で、新しい顧客が生まれているからといえます。一方、廃棄ロスが社会問題化し、食品残渣リサイクルの事業化がコンビニで試行されていますが、企業共同の仕組みが構築されると社会的コストの低下が期待できます。
農産品流通のプラットフォーム化
野菜需要のうち、家庭用は4割、業務・加工用は6割です。また、業務・加工用の契約栽培品は卸売価格の8割程度で取引されています。大口需要家と生産者の1対1対応ではなく複数の生産者と需要家でニーズを情報共有し、販売商品のミスマッチを解消するプラットフォームを構築する新事業も始まっています。
国産野菜の安定供給は重要な課題で、外食や小売業は、自社農場での調達コスト削減を目指しています。農業経費のなかでも出荷運送費が高いことや、将来的なドライバー不足が予想されることから、今後は農産品物流を最適化するストックセンターが重要となります。幹線道路に物流の拠点となる最新倉庫に設備投資を継続している企業も、食料インフラを担う機能として有望です。
海外でも活躍する日本の野菜種苗
作物は原産地に似た自然環境で育てた方が良質な種子を採取できるため、国内で優良原種を交配し新品種を育成し、種苗生産・販売を海外展開しています。育種技術では、日本企業は世界の先端にあり、ブロッコリーやキャベツでは世界でも高いシェアを獲得しています。例えば、インドネシアは食糧政策で米、大豆、コーン、砂糖、牛肉の戦略5品目の自給体制確立を優先してきましたが、近年は米に代わる換金作物として野菜果実の生産が増加しています。ある日本企業のキャベツ種子は、90年代から現地ニーズに合致する育種を行い、シェア7割のNo.1ブランドに成長しました。当地ではキャベツは作付面積上位の主要作物です。都市化に伴い、日本の外食産業やチェーンストアが進出していますが、種子のように現地に溶け込む事業を生業とする企業を発見することもあります。
長期投資のリサーチ
リサーチの過程で、様々な企業努力に出会い、新しい発見を重ねています。日用品企業は流通近代化の経験値で、アジアの家庭に小袋商品を販売し「これは、いいね!」の体験で顧客を創る企業努力を続けています。これは市場を深耕すれば、生活水準の変化に合わせた製品革新による成長を自社も取り込めると信じているからです。このように、生活者としての推論やアナロジーを活かし、「企業の経営計画の是非や業績」を細かく検討することが、長期投資の運用成果につながると考え、投資先企業の長期経営計画を作るつもりで、需要予測、設備投資計画やM&Aに係る資本政策などを調査レポートにまとめ、議論しています。
【ファンドアドバイザー 歌代 洋子】