「成長」のために自己否定も厭わない変革のスピードが魅力
日本で鍛えた技術力と経営力で世界の塗料の成長を支えていく。
「塗装により構造物を守る」という重要な機能を持つ塗料産業は、日本では漆に代表されるように紀元前から存在するほど歴史が古く、長らく成長期待の乏しい成熟産業として捉えられてきた。だが創業100周年を迎えようとする関西ペイントは、金融危機以降に加速させた新興国での事業拡大によってその需要を取り込み、業績は目覚ましい成長を見せている。同社は日本の自動車産業の高い要求に応え成長してきた背景もあり、いわゆる汎用品(建築・インフラ用途等)で新興国に進出することを不安視する声もあった。しかし、結果として多くの日本企業が経験したクタビレ儲けへの心配は無用であったことを、06年と比べ約3倍となった海外売上高が示している。
この成功はただの偶然ではなく、同社の貪欲な学びの姿勢が最大の要因である。例えば、同社は買収した企業の規模や立場に関係なく、そこに優れた手法があれば不要なプライドは捨て、すぐに過去を否定し、素早い変革を世界中のグループへ横展開するなどしてきた。これにより売り上げを拡大しつつも利益率を犠牲にすることなく成長してきた。機能や経済合理性だけではなく、文化・宗教的な美粧性に関する知見も併せ持つ同社に長期的に大きな期待を寄せている。
【アナリスト 斉藤 真】