Sawakami Asset Management Inc.

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雑穀は未来食

 東日本大震災後、「食べて農家さんを応援しよう!」と弊社会議室で開いたお米のワークショップのご縁でファンド仲間になった廣田さん。福島県二本松で農作物の加工・販売を行う家業を継ぎ、こう発信し続けている。「“おいしい”を届けたい。安心・安全は大前提だから。」
 国産ドライフルーツのサングリア・食べるオイル等、彩り豊かで栄養豊富な商品。その原点は大量消費社会の“儲からない”にあった。
 「大手が化学製法などを活用して安く大量に売れば、中小の生産効率では儲からないから続かない事業がたくさんある。『儲からないからやめる』企業の判断はある意味正しい。ただ、食卓から大事なものが失われた。例えば、雑穀。食料自給率の低い日本で栄養価が高く自給もできるひえ・あわ等は人の命を守る未来食。でも “儲からない”を理由に生産をやめれば種・土地・人は消え、必要な時にはもう作れない。さらに店頭の“安く儲かる”商品の先には低賃金と食糧不足に苦しむ途上国の貧困を助長する可能性すらある。」

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▲水とお酢で作る「ドライベジの自家製ピクルス」。
国産ドライベジと石垣の塩などが入っています。

 そこで食を通じた社会貢献を目指す廣田さんは「生産者の再生産を支える。」を事業理念に地元農家さんと耕作放棄地でえごま(シソ科の実)栽培を始めた。世界一カラダに良い油とされるえごま油で新たな市場を開拓すれば、雑穀の再生産に受け口が出来るからだ。栄養抜群の油は圧力だけで搾り出すため少量・高コスト。案の定、儲からない。ところが5年目、県内の競合他社が去り注文が増加し油事業は見事黒字化。そんな「食」と「職」の未来に手応えを感じ始めた矢先、震災は起こった。
 
 
 
 

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▲ワインを注ぐだけでサングリアができる
「自家製サングリアの素」。

地域と生きる

経営者、家長として取引先・スタッフ・家族等を守る廣田さんが最も苦しい決断を迫られたのは震災後半年の秋。
 生産者総会でのこと。「来年も、蒔いていいのか?」生産者に問われた。販売先の見込みはない。共同経営者の兄とも議論し一度は断ろうとした廣田さんだが、ハッキリ伝えた。「種を、蒔いてください。」
 考えるよりカラダが動いた。「農家さんを買い支えるなんて、カッコいいものじゃない。流通市場で誰かが持たなくてはならない在庫リスクを私たちが取っただけ。金融機関からの借入れには金利が、保管先では倉庫代が発生し経営は困窮した。でも、理念を大事にして毎年買い続けた。」
 実際、当時の仕入れが売れたのは昨年。すると、えごまは専門家から認知症やうつ病予防に効くと報道され、今では生産が追いつかないほど好評だ。
 「結果論です。売れない商品を仕入れ、倒産したら事業は継続できない。だから理念とリターン、半々の判断が理想です。」
 では原発問題をはじめ前例のない環境下で理念を貫き、同時に営利企業を率いる廣田さんが見出したリターンとは?「地域からの信用、それだけです。営利・非営利の区別の前に、地域と共に生きていく。それが法人の一番の理念では。地域が死んだら、地域との営みがなければ、事業の継続も利益もない。」思いは伝わり、一度は畑を離れた農家さんが戻ってきた。「俺らも、もう一回がんばるから。」と。
 風評や市場の壁も越える「おいしい。」に農家さんと二人三脚で挑む廣田さんは言った。「いざという時に互いに助け合える『人と人の繋がり』こそ財産です。」
 

食こそ長期投資

 「生産者は安全でおいしい農作物を作る責任、流通・加工者は届ける責任、そして生活者の皆さんにも全うしてほしい責任があります。今のカラダは全て自分が食べたもの、それも10年前の食事が影響しているとも。今日、何を食べるか?それは10年後の自分を選択すること。だから価格だけじゃない、生産者の思いやご自身の食べるシーン等にあわせて“買う責任”を全うしてほしい。10回に1回の買い物や外食をオーガニックの店にしてみようか?からでいい。カラダの仕組み、お金や世の流れまで変わりますよ。食こそ、長期投資です。」
 最後に廣田さんが描く「食」の未来を伺った。「今、『大切な誰かと、一緒に作ることを楽しんで、一緒に出来上がるまでの時間も待って下さい。』という世の流れとは逆のコンセプトの商品を創っています。お酢やワインを入れるだけとか。家族や恋人とどうぞって。失敗しても『次は○○しようね。』と新たな会話が生まれる。それがライフスタイル、文化になる。おいしく、たのしく、しあわせな『食』。ぜひ選んでください。」
 一人ひとりのモノサシが個と社会を変える。投資と食、未来を切り拓く力は同じだ。

 
【直販部 佐藤 紘史】
 

 
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株式会社GNS 常務取締役
NPO法人Leaf 理事長
廣田 拓也様
 
無農薬・有機栽培の農作物中心に、「たなつもの」ブランドを
全国展開。「食」の楽しさをマルシェやWEB 上で広めている。
http://www.tanatsumono.jp/

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