生活者目線を大切にしている「さわかみファンド」。数ある組入企業の中には、名前は聞いたことがあるけど一体何の会社なのだろう?と思われる会社もあるかもしれません。今回は、私たちの暮らしの中で活躍するそんな会社の製品の一部をご紹介いたします。意外な発見があるかも!?
1920年に日本初の合成香料製造会社として誕生し、1983年に世界初の不斉合成法※によるℓ-メントールの工業化に成功しました。ℓ-メント―ルは天然素材から合成され、歯磨き粉・洗口液、湿布薬、たばこ、男性化粧品などに使われ、世界需要は毎年増加しています。世界の合成メントール市場は、事実上、同社とドイツ企業の2社が独占しており、高品質と安定供給で世界の消費財メーカーから厚い信頼を得ています。同社は天然素材から合成する香りの際立つフレグランスに強く、日用品から、世界ブランドの香水にも多数採用されており、国内市場ではトップシェア、世界では5位に位置しています。フレーバー・フレグランスだけでなく、化学合成技術を活かし、医薬品原料も長年受託製造しています。
※不斉合成:科学的な処理過程の一つ。これによる研究で同社取締役の野依良治博士が 2001年ノーベル化学賞を受賞されています。
窓ガラスやスマートフォンのカバーガラスで有名な同社。企業名のとおり、ガラス製造を行うグローバルカンパニーの1つです。そんな同社の事業のなかには実はガラス以外にも歴史のある事業があります。それが化学事業です。製品は多岐にわたりますが、たとえば、近年、掃除用の万能アイテムとして主婦の間で注目が高まっている重曹や空調機器の冷媒など家の中においても身近なものを作っています。重曹では国内トップシェアで90年以上の製造の歴史があります。オールステンレスのプラント設備を持ち、充填工程をクリーンルームで実施するなど、高い製造品質管理体制のもと、医薬品や先端技術の分野にまで広がるニーズに応えるべく世界で最も品質の高い重曹を提供しています。世に出ている市販の胃薬の大半に同社の重曹が使われているなど、ガラス以外でも私たちの身近なところで生活を支えている企業です。
日本からブームが世界中に発信され、この10年ですっかり世界の衣料品市場で市民権を得たヒートテックに代表される機能性インナー。皆さまも知らず知らずのうちに利用して、その快適性や使い勝手の良さに今やすっかり手放せなくなったのではないでしょうか。実はこの機能性インナーの世界的ブームには、素材メーカーである同社の存在が大きくかかわっています。普段から身にまとう「衣」の機能を消費者が認めるほど高めるには、素材に吸汗、速乾、吸湿、保温、抑臭といった機能性を持たせることと併せて、発色(染色)の良さや肌触り、耐久性といった様々な実用性が求めらます。これをワンストップで実現できる存在が世界で同社ただ一つしかなかったと言っても過言ではないほど、素材メーカーとしての圧倒的な総合力の高さを持っています。利益率が低く歴史的に事業の撤退や縮小が常の繊維産業において、各種合繊の基礎研究や生産の継続に対して適切な経営判断をしてきたことが同社の今につながっています。
クボタと言えば農業トラクターですが、実はシェア6割の国内最大の水道管メーカーでもあります。久保田権四郎が明治時代に秤分銅の鋳造で創業、当時輸入に頼るしかなかった水道用鋳鉄管の量産に成功します。鋳鉄とは、鉄に炭素とケイ素を混ぜた合金です。高水密性で腐食に強く、コンクリートや合成樹脂よりも強靭なので、上下水道やガス、電話線の保護管にまで使われています。混ぜる元素の種類、熱処理温度や鋳造容量、流し込むタイミングによって鋳鉄の品質が異なります。創業以来、こうしたノウハウを積み重ねて高品質の鋳鉄を自社製品に活用。トラクターのエンジンはもちろん安全性が問われる工業バルブ、法定耐用年数40年を超える100年腐食しない水道管などを開発してきました。さらに地震に強い水道管にも早くから取り組み、その性能は阪神大震災や東日本大震災で実証され、米国やインドなどにも輸出、“世界のクボタ”となっています。
同社の得意技術は、米航空宇宙局(NASA)で開発された磁性流体です。磁性流体とは耳慣れない言葉ですが、宇宙ロケットだけでなく、身近なところではスピーカーの音質向上にも使われています。スピーカーは、電気が流れ磁力を帯びたコイルが内部の磁石と引き合い反発する振動によって音を鳴らします。コイルが振動し過ぎるのをゴムで吸収するのが一般的ですが、ゴム自体も振動してしまうので音が歪んでしまいます。ここで威力を発揮するのが磁性流体です。ゴムを磁性流体に置き換えると歪みが減って音が格段に良くなるのです。磁性流体とは、シンプルに言うと磁力に吸い寄せられる液体のことです。液体は振動の吸収が早く、ほとんど二次振動しないため、音質向上に貢献するのです。さらに磁性流体は密封性も高く、音響機器に限らず、半導体製造装置やPC機器、医療器具など微小な埃をも遮断しなければならない製品にも利用されます。同社は、数多くの磁性流体特許を取得し、その応用力は業界内でも定評があり様々な製品を開発しています。
私たちの家の中にはたくさんのモータが使われています。たとえば、エアコン、冷蔵庫、掃除機、ドライヤーなど。10年前に使っていた製品を思い返して比べてみると、冷却力や吸引力といった基本性能の向上はさることながら、同時に省エネ性能や静穏性の改善、製品の軽量化などが図られています。製品によっては、いつのまにかコードレスとなり使い勝手がかなり向上しているのに気付かされます。これらの改善には実は目に見えないところで同社のモータの性能向上が大きく貢献しています。他にもスマートフォンや携帯電話になくてはならないバイブレーション機能も内蔵されているモータによるものです。モータの可能性はまだまだ広がりを見せていますが今後はどんなものが増えていくでしょうか?iPhone6Sに初めて内蔵されたハプティックス※モータや今ひそかに注目を集めているバーチャルリアリティなど家の中にあるモータの数はこれからも増加の一途かもしれません。
※ハプティックス:液晶画面上のアイコンを触った時などに、あたかも実体があるような触感が得られること。