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小説トヨタ王国 天馬無限
邦光 史郎著
集英社

 いまや世界最大の自動車メーカーとして君臨しているトヨタだが、関係者はしばしば三河の田舎者という表現をつかう。三河の田舎者だからといいながらも、地道にコツコツと技術を磨いていくんだというマイペース主義を守る。
 まさに、長期投資家として応援したくなる企業像の典型例である。派手に経営力をひけらかせてマスコミの話題をさらう企業などよりも、ずっと親しみを感じる。応援したくもなる。
 そういったトヨタ哲学の原点として、豊田佐吉という人物について興味があり、いろいろ勉強した。発明家として、また豊田自動織機の創業者として大を成したということよりも、そこに至るまでのすさまじい生き方から多くを学んだ。

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 圧巻は、明治23年4月に東京上野で開催された第3回内国勧業博覧会での佐吉翁。外国製の織機を、毎日毎日朝から晩まで眺め続けた。
 当時の日本の技術では遠く及ばなかった海外製の構造や仕組みを、じっくり観察することで頭の中に叩き込んだ。その上で、それをはるかに上回る性能の織機を作り出した。
 小さな小屋に一人こもって、ひたすら発明と工夫に明け暮れる毎日は、まわりから狂人とそしられもした。世間の評価など気にすることなく、自分の信じる道を突き進む。そして、世の誰もが認める大仕事を成し遂げる。
 昨今の荒れ模様マーケットに対し、どっしり構えるわれわれ長期投資家と、どこか相通じるものがある。

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