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赤と黒
スタンダール著
岩波書店

 長期投資に何の関係もないのが、今月のテーマ「赤と黒」である。当初はカミュの「異邦人」をテーマにしようかとも考えた。正直、どちらでも構わない。
 どうして書いてみようという気になったのか?最近のマーケットが無機質きわまりない展開となっており、その反動として無性に人間臭さが恋しくなっているのかも。
 ちょっと前までは、買いや売りの注文を出すのも、人間が前面に出ていた。ところが最近は、プログラム化された計算式に沿って、コンピュータが1秒間に千回とかの売買を繰り返す。そのプログラムもマクロやミクロあらゆるデータを統計処理したもので、人間の関与するところはほとんどない。

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 そもそもマーケットは、人間が経済生活していく上での需要と供給のズレを、価格変動でもって調整するという役割を果たすところ。きわめて人間臭いところである。
 それなのに、最近のマーケットでは価格変動が一人歩きし、そこにヘッジファンドなど巨額の運用資金が群がり集まっているのだ。
 そういった無機質なディーリング売買によって形成される価格が、経済活動の指標となっていく。いかにコンピュータがプログラムに忠実に発注しようが、いろいろな歪みが蓄積されていくであろうと、われわれ人間ならバランス感覚が働く。
 昔のマーケットへのノスタルジーではない。それそろ人間臭いマーケット行動がカウンター・バランスとして登場してきてもいいのでは。

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