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オスマン帝国
鈴木 董著
講談社 現代新書

 もともと地理や歴史が好きだった。かつての王国や帝国の興亡に、あれこれ思いを馳せては、多くの書物を読み漁ったものだ。それが地政学と知ったのは、ずっと後のこと。
 世界史でも重要な役割を演じたのが、オスマントルコである。ローマ帝国の最盛期に比肩するほど広大な領土を支配したのみならず、文化・芸術・科学・技術の面においても当時の世界最高水準をいっていた。そんなオスマントルコだが、関連書物もすくなく意外と知られていない。
 本書では、多民族・多宗教の超大国を支えた「柔らかい専制」の秘密とある。民族や宗教などの多様性を認めた寛容性は、ローマの最盛期につながるものがあり、現代社会でも大いに学びたいところ。
 ともすると、イスラム圏と世界との対立ばかりがクローズアップされるが、キリスト教世界の一神教的価値観からくる排他性のしからしめる部分もある。もうひとつは、英仏が中東における民族の地域的分布を無視して、政治的に支配領土を策定したことが、その後の民族対立につながっている。

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 また本書ではわずかな記述しかないが、イェニチェリ軍団についてはもっと勉強したいところ。征服した地域で支配階級に生まれた男の子たちを片っ端から帝国の中枢に集めては、最高の教育を施し徹底した軍人養成をした。絶対的な統率の下、勇猛かつ戦闘力の高さで恐れられたイェニチェリ軍団が、オスマン帝国の領土拡張を支えたわけだ。

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