「仏教の冷たさ、
キリスト教の危うさ」
ネルケ無方著
ベスト新書
長期投資でより良い世の中をつくっていこうよといっているが、なかなか広がってくれない。長期投資の文化が普及すれば、日本経済はどんどん活性化するし、世界の平和にも貢献できるのだが。
いまイスラム国が世界中あちこちでテロを仕掛けているが、民族や宗教の対立といった図式の奥で、貧困や社会的格差が問題の根を深くしている。そういった貧困や経済的格差といった問題は、長期投資でもって解消していける。
ところが、民族や宗教の対立となると、実にやっかいである。とりわけ宗教や宗派の自己正統化論争は、武力行使につながることもしばしば。どうすれば、各宗派がもっとおだやかに棲み分けられるのか。
そんな問題意識をずっと抱えてきた中、ふと本書を手にした。ドイツに生まれプロテスタントとして育った筆者が、日本で仏門に入り日本人の宗教観にふれて、実に鋭い指摘を随所で展開してくれている。
「仏教の冷たさ」―それは現状をありのままに受け入れ、打開策を考えない多くの仏教徒の怠慢に起因している。「キリスト教の危うさ」―それは愛を叫びながら、結局は憎しみ合う一神教の謙虚のなさの表れだ。
キリスト教をはじめとした一神教には、強烈なニオイを感じさせられる。そのニオイをアク抜きできれば、どれだけ皆がおだやかに生きていけるか。
だから、他宗教を徹底的に排除する欧米のキリスト教圏に、日本的なキリスト教を逆輸入してはどうかとさえ思う。
どれもこれも、はっとさせられる。