「鳥の歌」
パブロ・カザルス著
筑摩書房
ずっと長期投資をやっていて、ある時ふと思い当った。長期投資の世界には、先があるのだと。
より良い世の中をつくっていこうで、お金に働いてもらう。そんな甘いこと言っていたら、マーケットの餌食にされるだけ。一般的にはそう受け取られがちだが、あにはからんや長期投資はしっかり結果を出してくる。
それはそうだろう。これはと思う企業を応援しようと、多くの投資家が売っている暴落相場を断固として買いにいくのだ。投資なんて安く買っておけば、後はどんな料理だってできる。世の多くの投資家が逃げ惑う暴落局面を買えるから、放っておいてもリターンは後からついてくる。
さて、積み上がってくる長期投資のリターンだが、もう一度お金に働いてもらおう。今度は心のおもむくままに、お金をつかわせてもらうのだ。
自分の良かれと思う方向が、文化や芸術であっても教育・スポーツ・技術・寄付・NPO・ボランティア、なんでも構わない。お金をどんどんつかってやれば、そこに雇用や新しい産業が生まれるし、その方向で経済の拡大発展にもつながっていく。
長期投資で殖えたお金をつかうといっても、どんな方向でどのようにつかわれるかで、人間性や精神性の高さ美意識といったものが問われる。カッコ好くお金をつかうべく勉強する必要がある。
本書では、世界的なチェロ奏者である巨匠パブロ・カザルスの頑固なまでに筋を通した生き方に、いろいろ学ばされる。