弊社でお客さま応対の仕事をしていると、数えきれない程多くのお客さまと出会い、いくつもの忘れられないエピソードがある…そのようにお世話になった方の1人が末永山彦様だ。ファンド設立当初からご家族で「さわかみファンド」に投資いただいており、私個人としても入社以来、母校の神戸大学の先輩として大変お世話になった。その先輩が残念ながら一昨年永眠され、相続手続きで初めてお話しさせていただいたのが、今回ご登場いただくご子息の末永航様。
航様は西洋美術史学者として広島にある大学の学部長を経て、現在は美術評論家、美術史家としての活動の傍ら、地域活性化の活動もされている。
地元の方と楽しみながら地域を盛り上げる
航様の活動の1つNPO法人おのみちアートコミュニケーションは、地元の旦那衆と共に自分の好きな演奏家を呼んでコンサートを開いたり、いろいろなイベントを仕掛けたりするための装置としてつくられた団体。「顔役の社長連中もポスター貼りや椅子運びまで嬉々として自分でやり、終わった後は著名なアーティストとゆっくりお酒を酌み交わします。大都会では舞台の上の姿にしか接することのできない人たちとも、ここでは身近なお付き合いができます。理事の中でよそ者は私一人ですが、気持ちよく受け入れてもらったので、もう10年以上も参加しています。」と淡々と語る航様からは、本当に好きなことをしているという充実感が漂ってくる。
小さい頃から身近なところに芸術があった
実業家で俳句が趣味であった祖父君は俳人のパトロンのような存在として大阪ではよく知られた人で、家にはよく俳人が集まっていた。その中の1人である山口誓子は叔母様と結婚して若い頃敷地内に居住されており、「その山口誓子夫妻には孫のようにして可愛いがってもらった。」と語る航様にとって芸術は特別なものではなく、生活の一部であるという実感が育まれたのだろう。
一方、山口誓子夫妻が亡くなった後、2人の遺志によって遺産は俳文学振興のための山口誓子学術振興基金として神戸大学に寄付された。現在、大学には山口誓子記念館が建てられ、山口誓子の関連資料及び蔵書等が保管・展示されている。「友人だった当時の学長先生と協力してこの計画を実現したのは、夫妻の弟にあたる父でした。」このような状況を経験してきたからこそ、貴重な財産を社会に還元することの大切さを実感されているのだと感じる。
お金に働いてもらうこと
そんな航様も、定職につくまでの非常勤講師の頃は収入が安定せず、厳しい時期が続いた。この時ずいぶん助けになったのは、保有していた東京のワンルームマンション。山彦様のアドバイスによりバブル前に購入、3倍ぐらいの価格で売ることができた。昔から投資についての考え方を山彦様から何度も聞きながら実践。お金を稼ぐのはお父上、自身は使う人と思っていらっしゃったそうだが、「初めてお金に働いてもらうことの重要性を体感した」のがこの時であった。
貿易関係の仕事を自分で始められ、副業として日本に駐在する外国人向けの貸家などをやっておられた山彦様。自分が働くこととは別に、お金に働いてもらうということを実践。そんな山彦様を小さい頃から見てこられた航様だからこそ「さわかみさんと出会った時には考え方が父と近いことに感激しました。さわかみファンドとの付き合いはそれ以来です。大学の学部長を辞した後も自分の好きな道を歩めるのは、お金に働いてもらえているからであることを実感しています。」と語れるのだろう。
世代間で引き継いでいかねばならないものとは、資産そのものだけではなく、投資についての考え方、そしてカッコイイお金の使い方であるということをこの取材から感じた。そして、それぞれのご家族でこのような引継ぎがされていけば、おもしろい世の中になっていくのではないかとワクワクする。
もちろんそのためには、世代を超えてお客様の資産をお預かり運用させていただくだけの実績および信頼が弊社には求められるし、弊社のスタッフが世代交代してもその実績および信頼を持続できることも求められる。頑張らねば!
【直販部 大野 敦久】
末永 航様
長期投資歴17年。美術評論家・美術史家。NPOおのみちアートコミュニケーション副理事長。スローフード広島会長。