ある通商国家の興亡
森本 哲郎著
PHP出版社
紀元前に栄えていた都市国家カルタゴが消滅してしまったのには、どういった背景があったのか。地中海の交易に興味をもち、いろいろ勉強していた。たまたま本書を手にし、ずいぶん考えさせられた。
地中海全域に植民都市をもち、商売が上手で富の蓄積に長けていたカルタゴは、ローマに恐れられかつ憎まれて壊滅させられた。その点が、エコノミックアニマルといわれた世界第2位にのし上がった日本に重なり合わされて、本書が刊行された当時、日本は世界でどうあるべきかを真剣に議論されたものだ。
その日本がその後ずっと低迷し、いまや世界から恐れられたかつての隆盛は面影もない。しかし、いまでも考えるべきことは山ほどある。
カルタゴは一体どうして滅んでしまったのだろう?
軍事力の差?最終的にはローマの軍事力によって、国家も人々も消滅に追いやられたが、中途まではハンニバルの活躍などでローマを窮地に追いやるほどカルタゴ側が優勢だった。
では、政治の混乱?指導層が長期的な国家戦略と外交に欠けていた?それはあるだろう。第2次ポエニ戦争後、莫大な賠償金を支払い、それでもって一件落着とカルタゴは考えていた。ところが、逆にローマ側をカルタゴ潰しに駆り立ててしまった。
いま日本が置かれている環境は、さてさてどんなものだろう。お隣りの中国や朝鮮半島、はたまた米国との関係はどうなっていくのだろう。