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モルガン家―金融帝国の盛衰
ロン・チャーナウ著
青木 榮一 翻訳
日本経済新聞社

 米国のFRB(連邦準備制度理事会)や日銀など各国の中央銀行が大きな力を持つようになって、まだ100年も経ってない。
 それ以前は、いわゆる個人銀行家がバンカーとして社会的にも高く尊敬されていた。彼らは金融の舵取りを一手に引き受け、経済の現場で滞りなく資金がまわるようにしてやった。時にはリスクマネーを提供したりした。
 バンカーは私財を投入するから、いつでも厳しく自己を律している。その上で、長い経験とバランス感覚でもって、資金の投入タイミングやリスクを取る限界を判断していた。

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 ところが、20世紀に入って、経済規模の巨大化とグローバル経済化の進展で、個人銀行家の手に負えなくなってきた。そこで、あれこれ試行錯誤を重ねながら創り上げていったのが、中央銀行という仕組みである。
 国家という絶対的な権力を背景に、中央銀行は通貨の番人として経済の安定的な運営に眼を光らせる役割を果す。
 それがいまや、史上空前ともいわれる大量の資金供給をしたり、マイナス金利をも導入している。また、日銀では通貨の発行権をいいことに国債をどんどん購入して、間接的ながら国の財政までも支えている。
 巨大な力を持つようになった中央銀行が、大量の国債保有で一人のプレーヤーとなると、もはや経済合理性が働きようがない。かつてのように自己規律とかバランス感覚とかによるブレーキをかけられぬまま突っ走って、この先どうなることか。

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