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「青べか物語」
山本周五郎著
新潮社

以前から書こう書こうとしたものの、なかなか「これにしよう」としぼり切れなかったのが、山本周五郎の下町ものというか、長屋ものシリーズである。
「青べか物語」「柳橋物語・むかしも今も」「さぶ」「人情裏長屋」など数々の作品を読んでいくと、心が洗われる思いに駆られる。貧しいなかにも、人間としてのやさしさが香り立つような生き様。次はこれ、その次はと読んでいるうちに、どんどん山本周五郎の世界に引きずり込まれていく。
市井に生きる人々が、より豊かにより良く生きていくお手伝いにと、さわかみファンドをはじめた。その原点のひとつが、山本周五郎が描いた下町の人情ものである。
みな貧しいながらも、それぞれ自立して生きている。自立しているが故に、人間としてのやさしさが自然とにじみ出てくる。そういうのって、しみじみと心に感じ入るものがある。ほのぼのとした気持ちとともに、生きていく勇気が湧いてくる。

そこへ、心やさしい長期投資を加えてやったら、どうなるだろうか。自分も働くが、それは右足だ。お金にもより良い世の中づくりで働いてもらうのが左足だ。右足と左足の働きで、経済的な自立が早くなる。そして、よりステキな社会にしていける。
山本周五郎の世界にある長屋生活は、長期投資の先に生まれてくる「ヴィレッジ計画」につながっていくものがある。そこでは、人間らしい生活とは何だろうとトコトン青くさく追求していくのだ。

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