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「森の生活」
ヘンリー・デイビッド・ソロー 著
岩波文庫

夏の暑い盛りに山奥へ入ると、森閑とした涼しさにホッとさせられる。また、秋が深まってくるにつれ、ひとり静かに思索にふけることが多くなる。そんな折も、ソローの「森の生活」が頭をよぎる。
投資運用とりわけ長期投資の世界にいると、群衆から離れて一人で行動することがほとんど。やはり「森の生活」へのあこがれみたいなものが、フツフツと湧き上がってくるのを感じる。これは、マーケットを相手にドッタンバッタンのディーリング売買などで熱くなっていたら、絶対に味わえない感覚である。
いくら長期投資の世界に身を置いているからといって、実際に、ソローのように2年数カ月も森の中で一人暮しをするかというと、そこまでは踏み切れない。それが故の、「気持ちのあこがれ」といったものが、本書の印象を強くしてきたのだろう。
いつ頃からか、「のんびりゆったりの長期投資」を唱えるようになっていった。株価が上がった下がったのマーケットの喧騒からは遠く離れて、マイペースで長期運用を進めていくと、しばしば一人ぼっちを感じる。その段階を超えて、孤独を愉しむようになっていくと、長期投資が楽しくなってくる。
あたかも、森の中ひとりで暮らしていても、小鳥のさえずりや動物の気配を感じ、それを愉しむかのような境地である。静かではあるが、生き生きとした生命の脈動は、しっかりと感じ取れる。そんなものを長期投資のイメージにすると、感覚がますます冴えてくる。

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