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負けるはずのないアクティブファンド(以下、アクティブ)がインデックスファンド(以下、インデックス)に王の椅子を譲りつつある現状について、前二回にわたり国内外の状況を見てきた。そこには運用の巧拙ではなく、運用者と投資家顧客との非連動性という世界的な問題があった。私個人においてはアクティブ・インデックスの勝敗などどうでもよい話だ。危機感を覚えるのは、運用そのものに命が宿らなくなる時代の変化に対してである。その中心に運用のパッシブ化があるため、敢えてアクティブの存在意義を示しているにすぎない。

パッシブ、つまりインデックス中心とはすなわち、資産運用が時間に限らず単なる金儲けに終始していることを意味する。それでも多くの国民の目的である将来不安の解消に役立てられ、また資産形成後のお金の使い方如何で未来を育むこともできよう。しかしながら本来、事業家がとるリスクを投資家がお金でもって支援することが投資のはずだ。投資家がリスクをとる相手はマーケットではない。将来の可能性なのである。より良い社会を望む事業家と投資家が手を組むことで、描いた未来が現実へと近づいていく。然るに投資する企業のことを見ず、さらには企業の先に存在する社会を見ないインデックスという手法は虚業であり、その未来に投資家自らが生活をしていることが忘れ去られているのだ。

現在、株価は世界的に適温かそれ以上だ。アベノミクス経済から始まった国内市場も随分と持ち直した。しかしそれは砂上の楼閣である。確かにファンダメンタルには強さがあるものの、投資(保有)主体に歪みが生じていることが問題だ。余談だが、来年から始まる“つみたてNISA”は国によって投資主体を是正しようというもの。株式市場を永遠に支えきれない公的マネーの代わりに国民の貯蓄を動かそうとしているのだ。しかし残念なのは、同制度がインデックス中心に考えられている点だ。玉石混交に投資をするインデックスを国が推しているということは、投資の社会的意義が国と投資家にしか向いていないと言えよう。それをも国が是とするなら、近未来には企業と寄り添う投資家が絶滅しているだろう。

企業を見ず、価格変動を捉えるインデックス中心の状況だと、何らかの理由で株価が下がり始めたら対応は難しい。インデックスやAIのロジックは破綻するからだ。その時に企業と共にリスクをとれる投資家、アクティブのファンドマネージャーが絶滅していたら問題は深刻化しよう。市場動向を見、社会の繋がりを見据え“能動的に”動く本物の投資家は、冷え込んだ社会を前進させる役割を果たす。そしてその後は運用成績のみならず、存在価値においてもアクティブに軍配が上がるはずだ。しかし世が目を覚ますには、世界的な暴落を待たないといけないのだろう。鶏が先か、卵が先か。我々は来たる日のために、誰が何を言おうとアクティブ運用を極めるべく邁進する。それ以外に道はない。

【代表取締役社長 澤上 龍】

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