12月11日に金融広報中央委員会が公表した調査データによると、二人以上世帯の金融資産の保有額の平均値は1,151万円と前回調査時より増加したが、一方で中央値を見ると380万円と前回の400万円より減少したようだ。平均値は数億円といった資産を保有する世帯も含めての平均のため上に引っ張られやすい。そのため、実態を見るには調査世帯の真ん中にあたる中央値を見るが、その額が大きく減っている。さらに金融資産の有無については「運用や将来のために備えているお金」について31.2%が未保有と前回を上回っている。と、ここまでを見て「金融資産を持つ者と持たざるものとの差が開いている」というニュースが世の中に大手を振って流されていた。
私も財産づくりを勧める立場からは「ほら、ちゃんと運用している人は資産が増えているでしょう、だから投資をしないといけないんですよ」と話を進めたいが、それはあくまでも世の中全体の話である。こと財産づくりにおいては、周りの人の資産があるかないか、いくらくらい持っているのか?というのは興味はそそられるかもしれないが、そもそも気にすることではない。もちろん、私たちのような運用会社の人間は、その責任の一端が自分たちにあると自覚して、もっと長期投資を世の中に広めていかなければならない。しかし、自分の財産づくりを意識する際に必要なことはもっと別のことである。
ありがたいことに子供にさわかみファンドを勧めたいという方によく「何から伝えたらいいですか?」と聞かれることがある。長期投資?運用方針?つみたて投資?ご自身の経験をもとに、伝えたい気持ちは溢れているが、何からどう伝えるかは意外と難しい。そういった方に私が必ず伝えているのは、「入るを量りて出ずるを制す」ということだ。この言葉は資産づくりの本質をついているし、どんな世代であっても親から子へ伝えやすいからだ。
先に紹介した調査の詳細を見ると、年収が1000万円を超える世帯でも、「金融資産を持っていない」世帯はたくさんいる。成果主義が一部に導入されたとはいえ、日本はまだまだ年功序列型の賃金体系が大半を占める。スタートラインでお金に関する身の丈教育ができていれば問題ないのだが、収入が上がるにつれ、上がってくる生活レベルが本当に身の丈に合っているのか?を後から確認することは意外と難しい。さて、ではどうすればいいのか?
その答えの一つとして、さわかみ投信では毎月のつみたて投資の最低額を1万円にしている。これは、所得の低い家庭や子育て世代には少し高いハードルかもしれない。でも、できればこのハードルは財産づくりのために超えて欲しいという私たちの想いを込めて設定している。今の身の丈を見直し何とか捻出した毎月の1万円は、きっと将来の大きな身の丈に繋がっていくだろう。そのために、志や目標は身の丈に関わらずどんどん上げて欲しい。高く掲げた目標や志に対してこのハードルを低いと感じた方は金額を上げればいいだけである。
アベノミクスの影響によりこの5年間で日本の株式市場の時価総額は約2.5倍になっている。もちろん、さわかみファンドの基準価額はそれ以上に大きくなっている。先の調査では、一般家庭において、その影響による資産の増加はほとんど見られなかったが、これをお読みのファンド仲間の皆さまの資産はどうだろう?せっかくなら、そういう家庭を少しでも多くできるように、今年は皆さんと一緒に長期投資の輪をどんどん広げていきたい。
【直販部 西島 国太郎】