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「小説ヤマト運輸」
高杉 良 著
新潮社

宅急便ビジネスの創設者、小倉昌男氏の旧郵政省や運輸省(現在の国土交通省)に対する壮絶な闘いは、いまに語りつがれている。しかしながら、監督官庁と激しくやり合った武勇伝よりも、受益者である顧客の利便性をトコトン追求した信念に感動させられる。これまで世になかったサービスを手掛けて軌道に乗せてしまわれたのだ。その努力たるや、それこそ筆絶に尽くし難いものであったのだろう。
トラックの路線免許を取得できるできないは、運送ビジネスにとって死活問題である。その許認可権を有している監督官庁に真っ向から勝負を挑んだのだ。あるのは、荷主である一般家庭が宅急便サービスを強く支持してくれるだろうという強い信念のみ。
日本ではじめて本格的な長期保有型投信を直販でやってやろうと手がけたのも、人々は必ず喜んでくれるという強い信念があってのこと。預貯金をはるかに上まわる財産づくりができてしまうという実績さえ積み上がれば、各家庭は「さわかみファンド」に雪崩れを打つだろうという読みとともに。
設定されて18年半、複利で年5.7%(2018/1/31時点)の実績を上げ、平均株価に対し2倍強の成績差をつけている。預貯金など遠く及ばない、堂々たる成果を世に問うている。
それでも、顧客数においても預かり資産額においても、宅急便のような爆発的な伸びは一向に見られない。まだまだ、われわれの努力が足らないからなのだろう。

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