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手術用縫合針

手術用縫合針

 過去にした苦労の積み重ねがトレードオフという形で残され今に続いているわけですね。ところで、針金を素材とする医療機器を扱う会社、「針金屋」だということを仰られていますが、この針金というものにこだわられているということにもなにか理由があるのでしょうか。

 創業のところからお話しますと、戦後、医療機器はスチールからステンレスに置き換わってきていました。しかし、縫合用の針だけは切れ味が要求されるがゆえに、ステンレスに置き換わっていませんでした。そこに着目しました。当時、ステンレスというのは錆びないけれども柔らかく、刃物にはならないと言われていました。そこで最初取り組んだのは、刃物になるようなステンレスはできないのかというところです。開発の結果、とても堅いステンレスができました。それ故に加工するのがとても大変でしたが、それをこなしているうちに、固有の加工技術ができました。ずいぶん時間がかかりましたが、針では成功し針金とその加工技術が現在までの事業基盤となっています。
針の次に事業領域を拡大しようかということで、医療用のメスへ進出することにしました。ずいぶん準備してお金をかけて、さぁ行こうとなったわけです。ところが同じステンレスから作りますが、針は線材、メスは板材を加工して作ります。我々は線材を加工するノウハウは持っていたのですが、線材を加工するのと板材を加工するのではノウハウが違い、結果失敗しました。この経験から我々は線材、針金に特化しようとなりました。
 今後の展望についてもお話ししていきたいと思うのですが、これからは人間の力では難しかった手術を、ロボットなどの力を借りてできるようになっていきます。そういった時に、より御社の需要が高まるということはありますか?
 ダヴィンチ(手術用ロボット)なんかでは、本当に微細な手術について、先生が直接やるようなところまではまだ到達していないというのが現実だと思います。また、内視鏡下の施術では、先生方は「メスでやっているけれども、ナタをふるっているような感覚だ」と仰っていますが、8K技術の進歩によってそれも変わると思います。世界的な眼科の先生とお話していたのですが、8Kの技術ができてきて、術式は劇的に変わってくるということでした。網膜には血管が通っていますが、これが今までは棒に見えていました。これが8Kになれば管に見えるようになります。そうすると、その中にカテーテルを入れるとか、今では考えられない微細な術式ができるようになってきます。そこで、マニーと一緒にそこに合う道具を作りましょうとなります。そういった新しい世界が開けてくると、ますます我々の素材や技術が優位性を上げ、他が追随できないものになっていく可能性があります。
 御社が必要とされる分野も増えてくるかもしれませんね。
 ベーシックなものは無くならず、そこにより高度なものが乗っかっていくと考えています。さすがに50年後にどうなっているか予断はできませんが、レーザーでの術式が増えてメスがいらなくなってしまうというのは杞憂というか、心配に及ばないのではないかと思っています。それよりむしろ、我々がより差別化できるような道具が必要とされる領域が広がっていくのかなと思いますね。

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