3月、さわかみファンドで初の外国企業を組み入れた。状況に応じ資産を切り替えるアセットアロケーションが運用の最上位概念なのだが、外国株投資までに時間がかかったためか「日本株応援ファンドではなかったのか?日本株には魅力がなくなったか?」との質問を受けたこともある。タイトルの“いよいよ”がそもそも正しくない。該当する外国企業を含め投資候補はすべて調査済、本件は“ようやく”であり、たまたま3月に投資機会が訪れただけのことだ。
流れはこうだ。企業を調査、議論にて選定した投資候補群をユニバースと呼ぶ。別途決定される投資政策委員会のアセットアロケーション戦略に基づいて対象資産を絞り、その後ファンドマネージャー(以下、FM)がユニバース内の企業に投資をする。無論、投資は対象企業がFMの考える適正株価以下になってから。
私は10年ほど前に、将来の運用体制を検討すべく海外の数多の先輩運用会社を訪問、それぞれメリット・デメリットや特に“さわかみファンド”への適合性を調査した。一人のFMに全権限を与えるやり方はファンドの成長に伴って無理が生じるからだ。
海外では様々な事例を学んだ。例えばFM①が某自動車を1000株買いと判断、他方でFM②が同じ自動車を200株売りたい場合、発注を担うトレーダーが①②双方の注文を相殺し某自動車800株の買い注文を出す方法。このやり方は複数のFMの成績を測るにはよいが、一本のファンドで同一企業の買いと売りが発生してしまう。別の例では、CIOの決定する投資セクター比率に基づいてセクター毎に置かれたFMが好きに売買する方法など。それぞれ根拠はあるのだが一様にして企業を応援する要素がない。リスク管理や牽制機能、更にはFMというポジションを付与するための理由が前面に出ていた。
他、多くの事例を見たが、当社はユニバースの概念だけを真似するに至った。投資する企業を議論で決める(最終決定はCIO/FM)。これならアナリスト達も担当する分野からの知見をぶつけられ、何よりチーム全体で意義を落とし込める。さわかみファンドで大切なのは企業を応援するという投資意義、その上での成績である。さらに規模が大きくなれば現体制も見直さないといけないだろうが、その時はアセット毎にFMを置くスタイルになろうか。50年先でもそして20兆円になっても、意義と成績を保持し推進できうる体制を構築することが長期保有を前提とした我々の使命なのだ。
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皆様のさわかみファンドは、おかげ様で本日(8月24日)より20年目を迎えることができました。人間でいえば、あと1年で成人。私たち社員一同は、多くの方に貢献し夢を与えられる大人を目指すべく邁進していく所存です。
およそ19年前、創業者の澤上篤人はこんなことを言いました。「運用を超えて顧客管理が受益者に安心感を提供することもある。堅牢な情報管理、迅速で誠意ある対応、そして技術を駆使した利便性。したがって当社では、運用業務と同等かそれ以上に顧客管理業務を輝かせなければならない」。私が直販を貫く判断軸としている言葉です。今後、運用以外でも皆様を良い意味で驚かせ、信頼・ご期待いただけるよう努めてまいります。今回はあえて、19期中の出来事を題材に運用体制について述べました。
【代表取締役社長 澤上 龍】