四季は人を感傷に浸らせる。人生であと何度、雪を見られるのだろうか。散り際の美しいあの桜は、灼熱の太陽は…。時間の積み上げは投資の鉄則で、四季の移ろいはむしろ味方にすべき事象である。企業も社会も地球も、人の命を超えて生き続ける。そんな未来に何かを残そうという長期投資はなんと意義深いことだろう。あの雪を、桜を、太陽を、1000年先の子ども達に残していくのは今を生きる我々の使命なのだ。他方で個人としての命は有限であり、だからこそ生きているうちに何かできないものか、今年は何をなしたのかと自らの人生を探してしまう。人を感傷的にする四季、とりわけ年の瀬とは不思議なものである。
SDGsに代表される社会の持続可能性。昨今はそれを事業や投資に求める傾向が強まっている。しかし本業との併営となりがちな活動は、社内統率に歪を生み、また景気次第でコストカットされる危険性がある。社会活動は本業と合致してこそ持続性を得られる。投資においてもその視点が欠落した中での企業評価は禁物だ。
さわかみ投信は、本格的な長期運用で一般生活者の財産形成のお手伝いをさせていただこうと1996年より走ってきた。その過程で“カッコイイお金の使い方”のモデルとなるべくさわかみ財団を立ち上げた。さわかみ投信の最終利益は配当によってさわかみ財団に行く。そして財団は、直接的な社会課題の解決、もっと言えば面白い世の中づくりに邁進する。まずは我々自身がカッコイイお金の使い方を実践しよう、そして結果を出し、多くの方の参考になれれば…それがさわかみ財団の設立趣意である。では、財団活動は資産運用業との併営なのか。さわかみ投信が財産形成のお手伝いに徹し、社会活動はさわかみグループ全体で補完する関係なのか。否である。さわかみ投信もまた、本業で社会を面白くすることがプリンシプルなのである。
長期運用に励んでいれば、複利効果もありいずれ大きな資産を築くことが可能だ。そして金銭的な不安の解消、いわゆるファイナンシャルインディペンデスの境地へと辿りつくはずである。さわかみ投信の究極的な目標は、長期運用で生まれた余裕を土台に、カッコイイお金の使い方を実践するファンド仲間が増えることにある。それすなわち、自立した個人が堂々と生きられる豊かな社会の実現である。ファンド仲間の輪が広がり、多くの仲間が動けば社会は変わる。一人一人がお金に想いを乗せた消費、そして社会活動を行えば、誰も抗えないとてつもない力となるのだ。また弊社の考える長期投資は、企業を通じて未来づくりに参加しようという行為に他ならない。未来の生活者、つまり10年後や20年後の我々自身の生活を豊かなものにしようと励む企業を投資という手段で応援することで、そんな未来が現実へと近づく。豊かな社会という公共のリターン、そしてそこに参加したことによる投資リターンを未来に手にする長期投資は、まさにカッコイイお金の使い方そのものと言えないだろうか。
もうすぐ平成30年が終わる。忘年会シーズンの今こそ、年を忘れて騒ぐだけでなく、未来につながる議論をしたいものだ。明日は同じ太陽が昇るだろうが、1000年後の太陽は今を生きる我々の行動で決まる。
2018.11.29記【代表取締役社長 澤上 龍】