漢方薬の雄、科学的エビデンスの集積・確立でも市場をリード
臨床現場における実績から漢方医学の国際化の流れが始まっている
明治26年(1893年)に創業者の津村重舎が「漢方の復興」を目指し津村順天堂を創設していなければ、今日保険適用の漢方薬は無かっただろう。二代目重舎は臨床データの集積に着目し、漢方を経験医学に留めず科学的に捉えるための「エビデンス構築」を始めた。漢方薬は自然由来の生薬を原料とした多成分医薬品であるため、成分毎にどのように病気に作用するのかメカニズムの解明が容易ではない。
しかし、同社は2005年に最も承認審査の厳しいFDA(米国食品医薬局)にTU-100(大建中湯)の承認申請をし、漢方の国際化を目指した。植物薬の承認審査に不慣れなFDAは同社に安全性に関する日本国内の調査結果を求めたり、植物薬の科学的品質評価方法を協議して一定の合意をしたりと、ある意味共に植物薬の承認基準を作成してきたといえる。治験は現在継続中だが、着実に上市へ向かっている。この間、国内外の臨床現場には漢方治療の有用性を示すエビデンスが多く集積された。日本医師会を筆頭に複数の大学病院の臨床医や英国オックスフォード大学などから漢方の治療例や薬物動態試験のデータが報告されている。
昨年6月、WHOが約30年ぶりに全面改訂したICD(国際疾病分類)の新章に漢方が取上げられ、世界的に認識された。同社が海外で活躍する日は着々と近づいている。
【アナリスト 大澤 眞智子】