相場調整時や暴落時は我先にと投資資金を引きあげるのが一般的だ。値上がりを期待して投資したものの、それが下がっては不安極まりない。早い段階で損失を抑えようとするのは当たり前の心理だが、その売りが次の売りを呼べば、株価や相場は止めどもなく下がってしまうだろう。結果、墓穴を掘ることに繋がる。他方で運用者は株価が安い時に投資したいと考える。安く買って高く売るのが投資の大原則だからだ。しかし相場下落局面でファンドから資金が引き出されたら、運用者はそれが叶わず、むしろポートフォリオ(保有株式等)を崩して受益者の解約ニーズに応えなければならない。故に近未来の素晴らしい運用成績など夢のまた夢となる。
本題は、弊社ご縁の窓口へのお電話や勉強会でよく耳にする嬉しい言葉だ。安値を買いにいくぞと腹を決めた運用者に対し、後ろから軍資金が届くのは非常にありがたい。それこそが、さわかみファンドの強さそのものなのだ。しかし本題、実は言葉としては正しくない。何が間違っているのか?
ファンドを安い・高いと示すためには比較対象が必要だ。過去の基準価額(推移)と比較するのが一般であり、またファンド仲間ご自身の平均購入単価と比べる手もある。基準価額が低くなったら同じ金額でも多くの口数が保有できるのもその通り。しかし、そもそもファンドに安い・高いは存在しない。
ファンドとは株式や債券、その他商品や現金などで構成されるパッケージ商品だ。したがってその中身が重要である。例えば現金比率100%のファンドの基準価額が1万円の場合は安いのか? 例えば暴落時に株式を目一杯仕込んだ直後のファンドの基準価額が3万円だったら高いのか? 前者は現金のため期待収益率はほぼゼロである。後者は基準価額こそ前者の3倍だが今後の上昇期待が持てる。しかしどちらも今という瞬間を表しているだけで、実は安くも高くもない。「塩漬けの個別株を持っているがどうすれば良いか?」というご質問もいただくが、税金面を別にすれば「その株式を持っていないと仮定し、今、投資したいか?」が答えだ。ファンドだろうと株式だろうと投資は常に未来に対して行われるのだ。
「さわかみファンドが安くなったら追加購入します」は、その行為自体が間違っているのか?
弊社はいつでも安心していただけるファンドを目指さなければならない。相場の波や景気のうねりをファンド内の売買で吸収しつつ、次の上昇相場、そして企業の利益成長に乗っていくのがその役割だからだ。したがってファンド仲間におかれては、基準価額の高低に関わらず、常にご自身の都合で投資いただくことをお勧めしたい。未来は今以上に基準価額が上がっていることをご期待いただきながら。それはまさに「つみたて投資」が示すところだ。
但し矛盾するようだが、相場が下がった時の追加のご購入は大変ありがたい。バーゲンハンティングという実利と、何より連携プレーこそが効率的で意思ある投資運用に繋がり、そしてファンドの長期安定化の極意だからだ。
最後に…本題の言葉は社員の心を動かす。基準価額10万円超えを、必ずファンド仲間にお届けしようと気が引き締まる。
2019.3.25記【代表取締役社長 澤上 龍】