プライベートバンキングで最大の任務は、お客さまの資産を保全しつつ、殖やしていくところにある。資産の保全というからには、何に対して保全するかの優先順位がある。
第1は、戦争に対してだ。戦争の悲惨さや理不尽さ、そして人間性までもズタズタにしてくれる様は、本書にウンザリさせられるほど描写されている。なにがなんでも戦争は避けたい。されど、他国がそれこそ理不尽に攻め込んできた時、どう国土防衛していくか。古今東西、人間社会がずっと抱えている課題である。
ひとたび戦争にまきこまれたら命すら危険にさらされる。そのような最悪の状況に陥っても安心できる資産を確保しておきたい。
あり得ないと高を括っていて、それにいざ遭遇して泡を食ったら話にならない。そこまで深く考えて、万全を期すのがプライベートバンキングの真骨頂である。
優先順位で第2にくるのが、インフレに対してである。さすがに戦争は避けるべく、あらゆる努力を惜しむまい。しかし、インフレは経済現象のひとつであり、起る時は起ってしまう。インフレ到来ともなれば、お金の価値がガタ減りし、財産もみるみる食い潰していくことに。財産づくりで最大の難敵といえる。
第3が、まともに生活が営めないような社会不安が高じた時に備えてだ。現在のシリアやイラクを想定すると理解しやすい。
第4第5ときて、ようやく通常の運用でリスクと判断する景気動向や金利変動である。