世界屈指の炭素製品リーディングカンパニー
海外M&Aと新用途開発の成長戦略に期待
“元素の王者”と言われるほど多様性に満ちている炭素。その製品は家庭の中から工場ライン、宇宙空間まで広く使われている。中でも同社が大きな世界シェアを持つ自動車タイヤの補強材カーボンブラック、鉄鋼電炉の黒鉛電極やリチウム電池の負極材は他素材での代替が難しい。加えて電炉製鉄で黒鉛電極を使わないと粗悪鋼材しかできず、CO2排出問題も引き起こす。そのため一昨年から中国はこの“地条鋼”を禁止。同社をはじめ、電極メーカーにとって追い風が吹き始めた。炭素製品の製造は成形と焼成の工程に各工場のノウハウが詰まっている。温度の上げ下げなど、いわゆる“職人芸”で品質が左右される。例えば、中国製の電極は日本製よりも3倍も燃焼効率が悪く、割れやすい。また、炭素製品は景気動向に超敏感だ。サプライチェーンでの立場も弱いので収益の変動が大きい。創業100年の同社は、高い技術力を蓄積している一方で変えるべきところを変えられず現状維持に甘んじていた。しかし近年、次世代に向けて積極的な成長戦略へ大転換。M&Aで次々と海外拠点を拡充。ダイヤモンド並みの強度を持つナノカーボンなど、最先端の研究にも注力、業界を先導して安定的な収益基盤の確立を目指している。
【アナリスト 村上 康弘】