日露戦争の帰趨を制することになったのが、日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を壊滅させた東郷平八郎率いる連合艦隊だった。時の海軍大臣、山本権兵衛は、連合艦隊の司令長官に東郷平八郎を選んだ。竹馬の友を苦渋の決断で更迭してのことだった。
よく語り継がれているのは、「東郷はきわめて強運の男だから」というのが選任の理由。真意は、前任者の性格に危うさを覚え、合理的かつ冷静沈着な判断と行動ができる東郷を、もう退役していたにもかかわらず呼び戻したようだ。
山本権兵衛は海軍の父と呼ばれたが、海軍諸制度の大改革を断行し、不要な人員の整理を徹底させて、精強な近代海軍を作り上げた。その結晶が、日本海海戦での大勝利だった。
我々の長期投資においても、マーケットの値動きに振りまわされない合理的な思考力と、下げ相場で敢然と応援買いを入れる企業の選別は決定的に重要である。
長期的な投資価値の高まりを読み込んで、暴落相場など皆が売り逃げに走る中を、断固として応援買いに入る。後は、3年でも5年でも市場評価が高まって来るのを、じっくりと待つ。言うのは簡単だが、実際にやってみると難しい。儲けたい気持ちが前に出すぎると、どうしても相場動向に引きずり込まれてしまう。長期投資の場合は、「安く買っておいて高くなるのを待って売る」リズムが重要。ただ、日本海海戦のような、乾坤一擲の大勝負は不要。