株式投資は難しいと言われる。景気動向を把握し適切なタイミングで資金投下できるか。そもそもどう企業を選べばよいか。一社か、複数社か、その比率は。海外企業も検討すべきか…。プロである機関投資家でさえ上記の一つも正確に読めないのに、情報量や分析力に差があり時間的制約を受ける個人投資家がどう市場で勝ち残れるのだろうか?
余談だが、同じ投資に分類される債券、為替、商品、不動産などの方がよほど難しいと筆者は考える。株式以外には価格変動の裏付けがないからだ。株式(株価)も短期では思惑など当てにならないものに揺さぶられるが、とはいえ企業(株式)は商品・サービスという実体価値が目に見えて存在する。一般に言われる株式投資;ケインズの美人投票に代表されるような、人々の思惑に賭ける行為は投資とは呼べない。投機である。仮想通貨が良い例だ。本来の投資=株式投資は企業の成長に乗ることを指すのだ。なお、個別の投資を絶妙に組み合わせるものを運用と言うが、それもまた簡単なものではない。
本題に戻る。株式投資は本当に難しいのか? 投資の業界だけで語ると「勝ち残ることは極めて難しい」となる。しかし投資の本質面で捉えれば違ったものが見えてくる。
例えばあなたが、経済・社会の新しい兆しやメガトレンドを読めたとして、その事業を始めるだろうか? 事業は社会倫理やルールの下に存在するため様々な情報収集や関係各所との連携が欠かせないが、その手段は? あなたの事業への協力者・会社は? 理念でもって社員を統率できるだろうか? 法務は? 税務は? 読みが外れた時の対応策は? 資金繰りは? 事業を継続するには“しなければならないこと”が数多存在する。それだけの莫大なエネルギーを要し、また人生を左右するほどのリスクは簡単には取れないだろう。
現実的にそれらすべてを実践しているのが企業である。であれば、企業(株式)に投資するのは非常に簡単と言えないだろうか。あなた自身の想うところ・メガトレンドに沿う企業を見つけさえすれば、あなたの事業はあらゆる専門家を擁する企業が代わりにやってくれる。それが株式投資でありオーナー(株主)になるということだ。
株式投資にはある程度の資金が必要だ。しかし事業に際しても資本金を用意する点は同じである。足りなければ投資家(出資者)を集めるのも事業家の仕事だ。事業を、頭と心と体を使って動かしていくのが事業家であれば、それを資金面で支えるのが投資家だ。役割は明確に違うが、しかし根底にある理念は同じはずである。(投資は相手がいないとできないという点も違う)。
新型コロナ問題はウイルス自体の短期終息は望めても、経済へ影響は深くそして長くなるだろう。多大な苦難を背負う現況下で、事業の存続や顧客、協力会社、また社員やその家族の生活を思うと、あなたは安眠できるだろうか? 投資(投機)であれば「売っておしまい」だ。さっさと現金化し次の相場を待つか、別の企業に切り替えればいい。しかし事業はそうできない。だからこそ事業家と投資家の想いを重ねることが大切であり、今のような状況にこそ求められる姿ではないだろうか。困難を共にし未来へ繋げる…想いと覚悟と資金さえあれば、未来をつくる手段として株式投資ほど簡単で便利なものはない。
【2020.4.15記】 代表取締役社長 澤上 龍