創業102年、素材の革新で時代のニーズに応える
鉄・タイヤ・半導体、その先を見据えたボーダーレスな事業連携
鉄とタイヤは基本製法が百年以上前に見出されるも、今なお特殊鋼や低燃費タイヤなど進化を続けています。その背景に素材の革新があります。大電流で鉄くずを溶かし、鋼の成分をコントロールする電気炉製鋼には「黒鉛電極」が、ゴムの強度と耐摩耗性の補強には「カーボンブラック」が欠かせません。同社は20世紀半ばまで米国に依存していたそれらの国産化を果たし、日本の工業化やモータリゼーションを支えてきました。今ではミクロン単位で炭素粒子を制御する技術を活かし、半導体やアルミ精錬の部材を手がけ、IT化や輸送機器の軽量化ニーズも追い風にしています。数十年に及ぶ顧客との信頼関係や研究開発を重んじる同社の姿勢は、老舗企業がうごめく業界内でも評価が高く、企業買収によって活躍の場をさらに拡げています。プラザ合意、アジア通貨危機、リーマンショック、そしてコロナ感染拡大等、社会のうねりに業績を左右されながらも、炭素をはじめ素材の変性技術を極めんとしてきた同社は、今後も各時代に産業の米(コメ)と呼ばれる工業製品の進化に貢献し、持続的な成長が期待されます。
【アナリスト 佐藤 紘史】