本書を手に取って最初に興味を引かれたのが、人類とウイルスや病原菌との闘いの歴史という下りである。
その代表例が14世紀のペスト大流行で、人々に黒死病と恐れられた。なにしろ、当時の世界人口の2割強にあたる1億人が死亡したといわれているのだから。ヨーロッパで都市への人口集中が進み、衛生環境が劣悪化したことで病原菌の感染が拡大したもの。
今回のコロナウイルスの前にも、1918年のスペイン風邪など、人類は数多くの感染病との闘いを繰り返している。それらに対し、人間サイドはウイルスなどの病原菌を撲滅させる薬や免疫力を高めるワクチンの開発を急いできた。
ところが自然界からすると、動物も植物も、そしてウイルスや菌も共生している。その共生関係をブチ壊してきたのが、人間という生きもののすさまじいまでの増殖である。いまや世界人口は77億人を超え、2050年には97億人に到達するという。
人はみな、より豊かな生活を求めてやまない。物質的な豊かさを求めるあまり、自然界との調和を無視した乱開発や野放図な経済発展にブレーキがかからない。それが果てしない森林の伐採や地球温暖化を進め、その挙げ句に災害や疫病など自然界からの逆襲を招いているわけだ。
このあたり、われわれ長期投資家も日頃からしっかり考えておきたいテーマである。自然との調和やバランス感覚を欠いた経済行動に永続性はないのだから。