人と菌と資本の共生に本業で挑む食のガリバー企業
乳製品で世界シェア1位の同社は、120ヵ国強でヨーグルト等を届け、腸内フローラから人の健康を支えています。第一次世界大戦後のスペインで、腸の障害に苦しむ子供たちを救うべくヨーグルトの工業化を果たし、今では世界有数のバクテリアコレクションを保有している同社でも、菌の働きや発酵の仕組みは解明できていません。人口増加と健康志向を背景に拡大の続く乳製品市場には、菌や腸内の解析技術の向上によって新たな付加価値(パーソナライズされた整腸サービス等)が生まれる余地もあります。また57ヵ国で10万名の従業員を擁する同社は、各地の生産者やその家族の雇用・教育・栄養を支えることで、地域経済の創出を図っています。1972年に「企業の経済的成長は目的でなく、暮らしや社会を支える手段である」と宣言し、昨年には「使命を果たす会社」モデルを採択した初の上場企業となり、コロナ禍では生産者ら1万5千事業者に3億ユーロの資金援助を表明しました。世界中の投資家と消費者の厳しい目にさらされる中、人と菌と資本の共生に本業で挑む同社の事業成長と社会にもたらすインパクト、その兆しを掴んで参ります。
【アナリスト 佐藤 紘史】