Sawakami Asset Management Inc.

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引き続き、個人投資家がファンドを選ぶ際に注意すべき手数料について言及したい。“販売手数料”は無意味な手数料で、可能な限りゼロ(ノーロード)を選ぶべきだと前回述べた。今回は争点となる“信託報酬”について。メディア等で語られる信託報酬の考え方は、我々運用会社から見ると違和感がある。その原因は比較する期間にあり、そしてサンプルとなる実績データの少なさから生まれている。

信託報酬、高低の是非

「長期でかかる手数料のため低いところを選びましょう」と、メディアが口を揃える信託報酬。投資している資産額に対し決められた料率の報酬を日割りで支払う必要があるため、低い方が良いのは確かだ。しかし、ここで疑問が生まれる。ファンドの成績(価値)である基準価額は信託報酬差し引き後の数値であり、つまり基準価額さえ見ておけば信託報酬は配慮不要ということだ。では、なぜ信託報酬が重要だと世は騒ぐのか?
その理由は、相場のうねりを乗り越えたファンドが世に少なく、比較検討が困難だからだ。高低の是非はおそらく、組成して3~5年のファンドを比較しているために起こるもの。相場が一方向に動く状況下ではファンドそれぞれの特性や強みは生かせず、そうであれば信託報酬の低いインデックスファンドが優秀だという論理になってしまう。
多くの個人投資家は、資産運用がブームとなる強気相場の中で生まれたファンドに群がり(広告や販社の強気営業も影響)、いざ相場が調整すると“損切”の名の下に資金を引き揚げる。アクティブファンドの真骨頂は下げ相場に買い向かうことだが、それを投資家顧客が許さず、アクティブが成績を出し難い現状こそが、逆説的だが低い信託報酬を絶対視する所以なのだろう。
例えば、さわかみファンドは信託報酬1%(税抜)とアクティブの中では低い方だ。しかしインデックスと比べると低いとは言えない。それでも、投資家顧客との絆が“相場調整時の買い”を後押ししてくれ、結果的にはインデックスの倍以上の成績を出している。信託報酬は低い方がベターなれど、低いが故に成績が出ないファンドだったら存在意義はない。

実績こそすべて

さわかみファンドは、これまで様々な努力を重ねてきた。例えば、ファンド内で株式等を売買する際の手数料(証券会社に支払うもの)について、当初0.15%程度だったものが、今や0.05%前後へと下がっている。トレーダーという“人”を介さないデジタル化の恩恵もあるが、少なからずこの努力によって基準価額は上がりやすくなった。また、残された顧客に還元される“信託財産留保金”も既に完全撤廃。よって、出し入れ自由という名目を全ての顧客が負担なく実行できる。

さわかみファンドはさておき、財産形成を目的とする全ての個人投資家に伝えたいのは、長期の実績に着目してファンドを選んでいただきたい、の一点である。何が起こるか分からない近未来において、荒波を乗り越えた実績こそが信頼に足るデータとなるはずだ。

【2021.3.25記】代表取締役社長 澤上 龍

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