占いが今、小さなブームと聞く。コロナ禍で仕事や健康などへの不安が募ったのだろうか。さすがに「失業保険の申請方法や再就職の相談に乗る占いがある」と聞いたときは驚いた。それはもうカウンセリングだ。諸々の不安の増加、そして人と会う機会を奪われたこの状況が、人々を“誰かにすがる”ことへと促しているのかもしれない。
占い史上、初の進化か?
古(いにしえ)より、占いは最終決断を迫られた際に多用されてきた。骨を割ったり、何かを転がしたり。しかしその結果に、説明可能な根拠があったのかは疑問だ。占いとは神の声を聞く行為であり、時の為政者が神の威光を借りたかった…つまり決断の後押しを得るため、占いを都合よく解釈し「こうしたいんだ」という腹の意を正当化していた。後に決断が間違ったとわかっても、そのときは神に責任を転嫁できる。「神は我々に試練を与えているのだ」「我々の信仰心が足りないのだ」と。
現代の、個人がするタロットや星占いも、経営者が神仏にすがる行為も似たようなものだ。神の威光を自らの説得材料にしただけの違いだろう。その点で、再就職云々が出てくるとは、占いも進化したものだと驚愕した次第である。
投資も占いで決めればよい
商品や銘柄選びのことではない。腹に決めた“その商品”に投資をするか否かだ。実際、多くのことは自身の中で意向が固まっているではないか。しかし誰かが背中を押してくれないと動けない。それなら、行動せずに後悔するより、行動して結果を楽しみにする方が良いはずだ。「ああ、やっぱり私の考えは間違っていなかった。悩んでいたけど占いの結果もあるので前進してみよう」。最終決断のトリガーを引けないなら占えばよい。
もちろん、神の思し召しとはいえ失敗・損失は怖い。そうであれば火傷程度で済む少額投資から始めればよいのだ。あらゆる計算・想定をしたうえで「動かない」ことも多々ある。それが「動かないことが賢明」との判断であれば良いのだが、「決断できない」だとすると何とも悲しいではないか。
明日は雨が降るだろうか?
いかに天気予報が正確になったとはいえ、明日の天気は明日にならないとわからない。雨が降ったら行かない? 雨が降らなければ行く? そうではない。お天気キャスターも言っている。「折りたたみ傘を携帯しましょう」と。つまり、行く以外の選択肢はなく、要は行き方の問題だ。それが企業経営であり投資信託の運用である。
株式(企業)そして投資信託(運用会社)は、しっかりとリスク管理を行いつつ成長を目指している。だからこそ、読者においては「これだ」と思ったものを信じ、占いの力を借りてでも行動してほしい。動かなければリスクもないがリターンもない。いや、時間を失うという実損と後悔が残るという意味では、リターンはマイナスだろう。しかし動いたならば、そこには必ず結果が伴い、仮に失敗しても“学び”というリターンが得られるのだ。
なお筆者は、占いを全く信じていない。
【2021.6.17記】代表取締役社長 澤上 龍