iDeCo? 利回り? 今さら聞けない投資のアレコレを、投資初心者の2人が
投資のプロ“さわかみ君”にぶつけます。第7回は「ファンド仲間は株主優待の恩恵を受けられますか?」
岡 先月、さわかみファンドを購入しているファンド仲間は、企業の株主総会に出られるのかと聞きましたが、株主優待はもらえるんですか?「お得な株主優待ランキング」といった雑誌の企画なども見るので、株主優待目的で投資をしている人も多そうですよね。
さわかみ君 企業からファンド仲間の皆さまに株主優待が直接届くことはありませんが、間接的には受けることができます。
岡 間接的ってどういうことですか?
さわかみ君 さわかみファンドの場合、受託銀行である野村信託銀行が投資先企業の株主名義人であるため、株主優待の権利は野村信託銀行が保有しています。そして、受け取った株主優待はそのまま配ることはできないので、優待物を現金化してファンドの資産に組み入れているのです。例えば、お米をファンド仲間12万名に口数分の米粒をお渡しする訳にもいきませんよね?
岡 米粒をもらっても困ります!笑
さわかみ君 ですので、株主優待で現金化できるものは換金され、さわかみファンドの純資産総額に入り、その分の基準価額が上昇するという仕組みです。そういう意味で、間接的に受けることができるとお伝えしました。ちなみに、現金化が難しいものは社会に寄付したりする制度も生まれてきています。
五来 ファンド仲間も間接的に株主優待の恩恵を受けているとのことですね。嬉しいです!
さわかみ君 そうですね。株主優待をもらう側としては嬉しいかもしれません。一方で企業側にしてみると、必ずしもプラスとは言えません。例えば、多くの企業がクオカードを株主優待として配っていますが、クオカードを買った分だけ企業としては支出となります。支出となれば利益も減り、企業価値に影響を与えます。
五来 企業の利益が減るということは、投資家にとってもマイナスですよね。では、なぜ企業は株主優待を出すのでしょうか?
さわかみ君 いい質問ですね。それは株主に自社のファンになってもらったり、安定株主になってもらうメリットがあるからです。消費者向けの商品にかかわる企業の場合、新製品のPRの場にもなります。
日本における株主優待は、鉄道会社に起源があると言われています。鉄道会社が株主に電車の切符を優待で配ることで、乗車してもらうだけでなく、鉄道会社が開発した駅や周辺のお店に立ち寄ってもらうこともできます。またテーマパークなどでは、入場券を優待で配った場合、お客さんはパーク内で食事をしたり、買い物をしたり、入場券以上の消費を期待することができます。
岡 確かに商品や優待券をもらったら利用してみようと思いますね。では、商品のPRや安定株主を作るという意味において、株主優待は必要ということですか?
さわかみ君 企業側として、株価や株主に対する対策として利点があるため一概には否定できません。しかし、企業活動の原点に戻って考えた場合、消費者に対してより良いサービスを提供し、企業価値を向上していくことが健全な企業運営であり適切な株価対策であると考えます。消費者としてファンになってもらい、そして株主として応援してもらう。そうすれば無理してクオカードを配るようなことはしなくても良いはず。株主だけに利益を配分するのではなく、ステークホルダーみんなで利益を分け合い、そして企業を支えることが豊かな社会を築くうえで大切なことではないでしょうか。
岡 私たちファンド仲間も、株主優待による利益を求めるのではなく、企業を応援する気持ちでファンドを購入している方が多い気がします。
五来 私も単なる資産形成だけではなく、「より良い社会づくり」も目指しているさわかみファンドの社会性に惹かれてファンドを買っています!
さわかみ君 ありがとうございます。今月は9月18日にさわかみファンドの運用報告会があるので、直接投資先企業の話を聞くことができますよ。本来ならば、運用会社は受益者に運用報告書を書面で送るだけでいいのですが、当社はファンド仲間の皆さまにどのような企業を応援しているのか肌で感じ、より詳しく知っていただきたいという思いで運用報告会を実施しています。
五来 企業の方の顔が見られると、株主優待に惑わされず、企業を応援するという気持ちで接することができると思います。
さわかみ君 株主の利益を求めることだけでなく、その企業の長期的な成長と、企業に関わる方々の幸せも考えることが、私たちの考える応援投資です。
五来 なるほど! 今日の話を周りの友人にも話したくなりました。
岡 世の中、儲けとか手数料ばかりみている投資家が多いような気がします。クオカードを配るまで広まった株主優待の文化も、ある意味投資家側の責任でもありますよね。利益だけではない、社会づくりとしての投資がもっと広まるといいなあ。