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上場企業の6社に1社が雇用調整助成金(雇調金)を受け取っていると日経新聞で読んだ。大企業でもそうなのだから、中小企業などはもっと酷い状況なのだろう。筆者が関係する観光業主体の企業も、雇用維持を図るため雇調金を申請した。副業の促進といっても現実的にはなかなか難しく、雇調金なかりせば社員解雇という苦渋の決断を迫られていたはずだ。その雇調金だが、財源は「労働者の雇用を守る目的で事業主が積み立てるもの」と国費だ。しかしそれでは足りず(助成額を引き上げたこともあり)、事業主・労働者折半で積み立てる失業等給付からの融通を受け、現在も何とか支給を保っている。

雇調金は枯渇する?

このままいけば、すぐにでも枯渇するだろう。しかしそれは食い止めねばならない。失業者の増加は経済全体を収縮させることに繋がるため、「ウチは体力があるから大丈夫」と高を括ってはいられない。すなわち、他の社会保険料と同様に足りないものは料率を引き上げて埋めていく…つまり事業主と労働者の負担は増えていく一方だ。

不景気に備えて蓄財に努力していた企業にとっては、そうでない企業の苦難のために負担するのは不公平だと思うだろう。しかし税金や健康・労働保険料、そして年金のような公共性ある資金は、皆で賄うしかないのだ。それが、自らが住む社会や経済を保つ方法なのだから。自分だけでは誰も生きられない。

不正受給はどう考える?

冒頭で触れたように、雇用保険には雇調金(雇用の安定)の財源になるものと、失業等給付(失業者の生活を守る)というものがある。雇調金頼みで労働者の雇用を維持するとはいえ、事業主は労働者に一定割合の給与を支払わなければならない。それすらも難しいとなれば、いよいよ解雇という選択肢も見えてくる。
実際、筆者の周りで仕方のない解雇通知を受けた人物がいる。しかしその人物は、スキルも社会経験も豊富であったため、すぐに複数企業と契約を結ぶことができた。フリーランスとして受け取る報酬総額は解雇される前よりも高く、筆者も安堵したものだ。一方でその人物は失業保険も申請したとのこと。知人の入れ知恵だろうか、「どうすれば上手く渡り歩けるか」という姑息色に染まってしまった。

“失業の活用術”を自慢する人がいる。失業手当を受け取りつつ、別に起こした法人の経費をうまく生活費として捻出し、税金等を払わないなどの輩だ。様々な裏技で利を得ており、それをもって優秀さを自任している。

そんな不条理がまかり通るのかと声を荒らげたいところだが、他方で、失業して本当に困っている人がいるのも事実。いずれは我が身といった保険の意味でも「不正があるなら俺は払いたくない」とは言っていられない。社会・経済は皆の集合体であり、一つなのである。

不正をあぶり出し是正を求めることも重要だが、そんな不正がなくても誰もが生きていけるような優しい社会を目指す方が楽しい。長引くコロナ禍でストレスが溜まりがちだが、だからこそ大らかな気持ちであるよう努力したいものだ。とって付けたようだが、さわかみファンドを長期積立していれば、経済的自立に向けた自信を持てるようになる。それもまた、大らかに生きる一つの方法だと最後に添えて。

【2021.9.3記】代表取締役社長 澤上 龍

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