電気の通り道をつくる半導体産業の立役者
スマートフォン・自動車・通信等の進化が目覚ましい。それら生活インフラの心臓部を担う半導体と電子基板に欠かせないのが、0.1㎛(1万分の1ミリ)単位で電気の通り道を作る同社の工業化学薬品です。導電する銅を溶かし、絶縁樹脂と密着させる特徴のある同社薬品によって、厚さわずか1.1㎜に10層もの基板をミルフィーユのように重ね、さらにそれを部分的に上下に貫通させ配線パターンを形成することができます。
先端半導体を搭載する基板向けで同社が圧倒的なシェアを誇る背景には、顧客と二人三脚の開発・生産があります。尼崎の本社工場では基板メーカーに高価な精密分析器を無償で貸出し、生産ラインの再現等も行います。また薬品は地産地消を基本とし、顧客の製造拠点近くに工場を設け、原材料の大半を現地調達することで供給責任を果たしています。高価な最終製品の原価に占める薬品の割合は低く、品質と生産性(歩留り等)で選ばれること、なにより顧客の信頼と実績が他の参入を許さない理由と言えるでしょう。5G の普及によって、交通・医療・農業はじめあらゆる産業で半導体の役割は拡大します。それに伴い、基板の更なる進化(高細線化・多層化)も求められる中、同社薬品による一層の貢献が期待されます。
【アナリスト 佐藤 紘史】