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「ウチの株価が急落したけど理由は分かりますか? 社員が不安になっているようで…」。昨年の秋深まる頃、知人から突然こんな連絡が来た。少し調べてみると、再編後の東証最上位市場である『プライム』の残留を望み、株式の流動性を高めるために創業家が保有株式を市場売却したようだ。突然の事態に割を食ったのは自社を信じて株式を積み立ててきた社員たちで、筆者は「企業価値・実力が下がったわけではないので、それまでが過剰評価されていないのであれば心配無用」と答えておいた。
本年4月に東証が再編される。各市場のコンセプトを明確にし、かつ海外マネーを呼び込める魅力ある市場へと促すためだ。再編実施まで残りおよそ2 ヶ月、本当に魅力ある市場になるのだろうか? 今のところそうは思えない。

昨年5月の長期投資だよりの再確認

要約すると下記の通りだ。
降格基準が甘いため、上位市場に適さない状態となった企業も東証一部に多数残留し、市場自体の魅力がないこと。故に市場区分・コンセプトを明確にし、例えば “ 気候変動対応 ” などの説明を求め、グローバル企業として満たすべき最低基準を示した。冒頭の市場流動性(流通株式の比率)の件も投資しやすさや企業統治の面で必須要件だ。それができないなら下位の市場へ行けと。
次に、そういった玉石混交の市場に対し、今や主流となった指数連動型の運用マネーが入り込んでしまうことの問題。業績等が冴えない企業ですら自動的に買われてしまうため割高になってしまうこと、更には企業自体が下支えマネーに依存してしまうこと。そして市場全体が伸び悩むことが挙げられる。
最後に、下手な序列が身の丈を見ずに上を目指す要因となるなら、『プライム』や『スタンダード』ではなく、思い切って『グローバル』『ドメスティック』『スタートアップ』と分かりやすい名称にすれば良いと唱えた。上位下位の見栄ではなく、どんな投資家に支えられたいかを明確にすべきと。

改めて思う…誰のための再編なのか

『プライム』が求める高い基準については同意だ。世界を相手に戦う企業だからこそ、世界が求める基準は最低限満たすべきだろう。仮に満たせていないのなら目標にすればいい。それが企業改革に繋がるなら「七難八苦を与えたまえ」だ。
しかしここで日本らしさが出てしまう。急な改革断行は諸々影響が出るため、基準未達の企業もしばらくは最上位市場に残留できる。企業改革という点では、経過期間中に改善を促すというのは分かる。しかしそれなら、一旦は除外し再挑戦を促すのもありなのではないか。TOPIX の構成についてもそうだ。指標は連続性が重要と、こちらもしばらくは変わらない。再編の名の下で投資家の期待を煽り、蓋を開けてみたら当面は旧態依然のまま。改革には時にスピードも重要であり、このままでは日本市場は世界に置いてけぼりを喰らう。今の日本には強いリーダーシップが必要だ。

【代表取締役社長 澤上 龍】

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