2022年より高校での金融教育が始まりました。ここでは、お金を通した社会との関わり方や、子どもの未来のために何をすべきかなど、学校の授業では教えてくれない「お金」と「生きる力」の育み方についてご紹介します。
教えてくれるのは、さわかみ投信確定拠出年金部の計倉宗州(とくら そうしゅう)です。ファイナンシャルプランナーと企業年金総合プランナーの資格を持つお金のプロです。10歳の息子を持つ父である彼に、お金との向き合い方や実践しているお金の教育に関して根掘り葉掘り聞いてみました。今回は、お小遣いについて!
子どもの性格に合わせたお小遣いの渡し方
—— 新学期を迎えて約2ヶ月。お小遣いの額や渡し方についてまだ迷っている方も多いと思います。ズバリ、お小遣いの額はどのように決めたら良いですか?
計倉:ズバリ!!!
答えはありません。
なぜ答えがないかというと「育ってきた環境が~♪違うから~♪」ってことなんです。お金に対する価値観は人それぞれ、夫婦でも完全に一致していませんよね。「周りがいくらあげているからうちも同じだけあげなきゃ…」と、周りに合わせる必要はありません。
—— そうなると結局いくら渡したら良いのか迷いますね…。
計倉:まずはご自身の子どもの頃にもらっていた金額を思い出してみてください。それをベースにして、「あの頃はもう少しお小遣い欲しかったな」と思ったら、少しプラスしてあげるとか。そこからスタートしてみてはいかがでしょうか。
お菓子やおもちゃは〇十年前と比べて意外と割高になってるので、それも考慮しましょう♪
—— なるほど。私は足りなくて、「お小遣い上げて!」といつもお願いしていた気がします。では、お小遣いの渡し方はいかがでしょうか?
計倉:月いくらといったように定額であげる、あとはお手伝いをした場合の報酬としてあげる、必要な時にあげる、などお小遣いの渡し方は色々あると思うんですが、これもまたベストな答えはないんですよね。
限られたお金の中でうまくやりくりできる子だったら定額制、「これが欲しい!」という思いが強い子は、頑張った分だけもらえる報酬制など、大事なのは「その子にはどのような渡し方が良いのか」を考えることだと思います。
—— 計倉さんはどのようにお小遣いを渡していますか?
計倉:我が家も日々試行錯誤しているところですが、今は定額では渡していません。うちの子はおもちゃ付きお菓子とかは欲しがるのですが、あまり高いモノは欲しがらないんですよね。親に似て貧乏性??なのか、「お小遣いを貯めよう!」というモチベーションにならないのが今一番困ってるところであるんですけれども(笑)。
だから向上心を引き出すという意味で、他人と比較するのではなく、これまでの“自分の記録”を超えた時にお小遣いをあげるようにしています。例えば、計算ドリルで自己ベストタイムを更新できたら50円とか、二重跳びを20回跳べたら200円、30回跳べたら300円あげるなどですね。(まだ30回も跳べませんけど…)
今後はプレゼン方式も導入したいと思っています。今はまだ、子どもが何かを欲しがった時に「なんで欲しいの?」と聞いても、「欲しいから」としか返ってきませんが、本当に欲しいんだったらその気持ちをしっかり相手に伝えられるようになるために。内容が論理破綻していようが、自分の気持ちをきちんとアウトプットできる、与えてもらうばかりではなく、自らチャンスをつかみ取りに行くような子になって欲しいですね。
—— お小遣いを通して、自主性や言語化する力を伸ばせるのは良いですね。
計倉:知人が実践しているお小遣いについての工夫で、面白いなと思ったことがあります。お金の預け先を“親”にすると金利が付くという仕組みを取り入れたそうです。そちらの家庭にはお子さんが2人いるのですが、性格がまったく違っていて、一人はせっせと“親貯金”をするけれど、もう一人はお小遣いをもらったらすぐに使い切るそうです。いくらお小遣いの仕組みを工夫しても、その子に合うかどうかだなぁと改めて感じました。
—— 同じ環境で育っても、お金に関する考え方が同じとは限りませんね。
計倉:ちなみに、その子に合うか合わないかは置いておいて、この親貯金は、銀行の仕組みを伝えるにはいい方法だなと思います。
失敗して学ぶことが大事
—— 報酬制にした場合、「○○したからいくらちょうだい」「お金くれないならやらない」といったように、“お手伝い”と“お小遣い”が常にセットになってしまわないでしょうか。
計倉:それもあり得ますよね。うちの場合は、家族の一員としてお父さんは外で働いてるよね、お母さんはお家でごはんを作ってくれたりお掃除をしてくれているよね。じゃああなた(息子)ができることは何だろう?という話をしています。だから息子がお風呂掃除や食後の片付けをしたとしても、お小遣いはあげません。
—— 家族の一員として何かをする、という考え方はとっても素敵ですね!
計倉:もうひとつお小遣いについて決めていることがあります。基本的に、与えたお金に関しては使い道には口出ししない、ということです。そこに口を出してしまうと、子ども自身で考えることができなくなり、無駄遣いをしたことにも気づけなくなってしまいます(そもそも子どもにとっては無駄遣いではないのですが)。
子どもの頃の失敗ってとっても大事なので、「お金をいっぱい使っちゃったから、欲しいものが買えない」ということを経験しないと。何でもかんでも親がコントロールして修正していたら、大人になっても自分で修正できなくなってしまいます。それこそ大きな詐欺に遭うかもしれません。
子どもの頃に使う金額ってかわいいものなので、「またそんなしょうもないもの買って…」と思っても、本人が納得しているのなら何も言わずに見守ります。
お金に限らずですが、正解なんてないと思うので、結局はその子とどれぐらい向き合えて理解できているか。お子さんが何を考え何を欲しているのかに焦点を当ててみてくださいね。
【計倉 宗州(とくら そうしゅう)プロフィール】
さわかみ投信株式会社 確定拠出年金部 部長
AFP/2級DCプランナー
茨城県つくば市在住。都内勤務。1児(小4♂)の父。生まれも育ちも関西ですが、2008年に現職に転職のため上京。いまだに東京に慣れてません。基本的に関西弁しか話せません。趣味は料理です。