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 投資には「ゼロをイチに」するような印象がある。例えば、さわかみファンドのように上場企業を中心に投資をする場合、「イチをジュウに」しようと励んでいる企業に寄り沿うのが基本だ。企業努力が「イチ-ジュウ」を成すわけだが、投資家(=オーナー)がその成長を見守ることができるならば、投資家の応援が「イチ-ジュウ」を支えたと言えるのではないか。逆も然りで、投資家が企業の目指す「イチ-ジュウ」に“待った”をかけることもできてしまう。
既にビジネスを確立している上場企業はそのままでイチ以上の価値があるわけだが、そんな企業から全く新しい商品・サービスが生まれることもある。企業価値は「イチ、ないしはヨン-ジュウ」かもしれないが、社会を変え得る商品・サービスは我々生活者から見れば「ゼロ-イチ」だ。

 

つまり投資は成長を促すもの?

「ゼロ-イチ」だろうが「イチ-ジュウ」だろうが、つまり投資は成長を促すものなのか? その通り、投資資金が倍になって返ってくることを期待するなら、その源泉となる企業価値の成長が必須だからだ。「ゼロ-イチ」投資の最もわかりやすい例がスタートアップ企業への投資だろう。まだ企業価値すらも計れないビジネスアイデア、熱意などに対してエンジェルが資金を拠出する。
企業がいかに持続的な成長を目指そうとも、その道のりには節目があるように思う。そして長期投資家は、その節目の到達まで時間がかかっても応援し続けるもの。それが10年先なのか、あるいは30年かかろうとも。無論、短期投資は価格変動で儲ける手法のため、相手の成長など期待もしない。数多の投資家の思惑や心理が需給つまり相場を形成し、それをうまく乗りこなすだけだ。

 

成長促進ではなく残す投資

「イチをイチのまま」残すのも大切な投資だ。その最たるものが事業承継だ。「イチがゼロに」なることの怖さを想像いただきたい。当たり前のものが目の前から消えていく社会を。実際、「ゼロをイチに」するよりも社会的インパクトは大きいのかもしれない。
後継者未定問題は大きな社会課題だ。当たり前のものが消えていくこと、平均して一日当たり1,500人が職を失うこと、それによる社会の歪・不具合が発生することなど。「ゼロ-イチ」や「イチ-ジュウ」と比べて事業承継は夢を抱き難いかもしれないが、しかし避けては通れない喫緊の課題だ。
少し視点を変えてみよう。すでにキャッシュフローが回っており、地場でしっかりと地位を築いている企業が引き継ぐお金や人が足りないだけの場合、出資をするなり後継者を斡旋するなりができれば、これほど安定した投資機会もないだろう。自然淘汰は別にして、少なからず目の前に収益、そして活躍の場があるのだから。そういった“残す投資”も期限がない。必要とされ続ける限り、永遠なのだ。

「ゼロ-イチ」→「イチ-ジュウ」→「ジュウ-ジュウ」。企業のステージが移っていく過程で、リターンとリスクが徐々に低減していく。すなわち、すべて投資可能だ。

【代表取締役社長 澤上 龍】

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