とても面白いWEBサイトを見つけた。『全世界の国内上場企業の合計数ランキング』というもので、この50年くらいの順位の入れ替えの様子、または世界地図上での変遷がアニメーションで見られる。何かのレースを見ているようで、序盤は英国・日本・カナダ優位で始まり、途中、欧州企業が頑張るも米国が独走、そしてアジア勢が徐々に先頭集団に入っていき、最終的に米国が失速、インドがトップに躍り出た。我が国は4位か(2020年時点)。
上述のWEBサイトにたどり着いた経緯は、世界時価総額トップの米国の上場企業数を知っている人は少ないのではないかと感じたからだ。圧倒的な時価総額を誇る米国だ。企業数も比例して多いのだろうと誤解もあるはずだが、実は日本とそう変わらないのだ。
米国が2位に甘んじる理由
投資の世界に身を置いていると、この理由が肌感覚で理解できる。ズバリ、上場メリットが少ないからだ。米国で上場企業数がピークだった90年代後半から半減している理由をウォールストリートジャーナルは「資金調達は平易になったこと」「株主がうるさくなったこと」「エンロン事件以降に規制が強化されたこと」と言っている。筆者などはもう15年ほど前から上場への疑問を感じ、企業に対し非上場を薦めてきた。東証再編を経て未だに最上位市場にしがみつこうというところもあるが、上場企業は改めて「なぜ上場しているのか」という本質的な自己問答をしても良いのではないか。
なぜ日本の株価は伸びないのか
さて、時価総額と上場企業数の話に戻ろう。日本とそう変わらない上場企業数の米国だが、なぜ時価総額はこれほどまでに差があるのか。一社当たり平均時価総額は日本の5倍にもなっている。
原因の一つに、投資家の厚みの差があるだろう。日本の場合、株価は過去のピークを越えないという不思議な常識がはびこっており、「どうせ下がるだろう」と買いの勢いを自ら止めてしまう。企業価値を見ずに株価だけを見ていることがその理由だ。
次に、企業自体に成長意欲がなくドラスティックな改革ができないこと、そして市場の新陳代謝の悪さも大きな原因だと思う。それが故に日本の投資家がピークの株価を越えられないと考える。要は鶏と卵だ。しかしながら30年チャートや更に期間の長い株価推移を見ると、波は打ちつつもじっくりと株価を伸ばしている企業も見つかるはずだ。それら企業の共通点は、企業価値をじっくり高めてきたということだ。
今なお、世界を相手に価値を高めようと励む企業が日本には存在する。森全体の成長は残念ながら期待薄だが、その中でしっかり目を凝らしていけば光る木も見つけられるだろう。不健全な市場では今後何が起こるか分からないからこそ、大地に根を張り、越冬後に葉や実をつけられる企業にはむしろ買い好機が来ると言える。
[2022.7.12記] 【代表取締役社長 澤上 龍】